2023/05/04

友だち
林に入ると,その年の春先の様子がすぐ分かる。
残雪の上に落ちた枝がどれくらいの量で,その落ちた枝の太さ,倒木の数や様子に少し気を付けて見てみるとよい。春先に林を往きすぎた嵐の規模や風の様子が分かる。今年の春は,例年より一週間以上早い様子で,既に林の沢沿いに残る雪も殆ど消えていた。さほど倒木も目立つほど多くなく,春先に嵐が吹きまくったという感じはあまりしなかった。自然が好きな人は,まず観察力を身に付けることが大切だとよく言われるが,毎年同じ時期に,同じ場所に通うと定点観察が出来て,林の様子,湿原,植物,花の付き方,生長の度合いなどを昨年とすぐ比べられる。昨年までに身に付いた観察力がそのまま使えるのである。無駄にここそこと忙しく歩きまわり,せわしく目を配る必要もなく,気分も落ち着いて観察できる。

コバイケイソウの展葉 外の方から開いていく葉の頂点を辿って線を引いてみた
そこで今年歩いていてふと気付いたことを紹介してみたい。
私が行く湿原は,もう五月も中旬になると,密生したコバイケイソウが背丈以上に伸びてしまい,もう湿原の奥に足を延ばそうという気もしなくなる程である。
かわいいとは言えないが,葉が少しずつ開き始めた明るい緑のコバイケイソウをしみじみ見ると,その葉の何か規則的な重なりに気付いた。外の葉の方から開きつつあるそれぞれの葉の頂点を辿って線を引いてみた。すると中心に向かって美しい三角形ができた。
ここで,葉序がいくらか,葉の付き方はどうだとか,観察吟味してみる。と,言っても植物学者牧野万太郎だったら,的確に分類できるだろうが,こちらはただの素人なので,高が知れている。
ただ,展葉時では横に広がり,横に広がりきると,今度は垂直面(たて)に伸びていく。縦に伸びながら,螺旋状に葉が付いているのがはっきりとどれほどの開度なのかが分かる。太陽の光を効率的に葉で受け止めようとする。これは植物たちの生長の戦略だろう。タンポポだって,花が咲いたら今度は縦に伸びて背が高くなる。高い所から種を蒔いた方が,遠くに飛ぶ。ましてや他の植物より背が低ければ,日陰になって生長が途絶えて,不利となる。こんな風に考えながら,まんたろうのように植物を見ていくと,確かに興味深い。例えば,このコバイケイソウの葉の頂点で結んだ線を見ると三角形だが360度を黄金比の1.618で割ると222.5度となり,360-222.5=137.5度となります。多分このコバイケイソウは120度ずつで葉が付いていくだろうなと感じられます。従って葉の付き方は,1,2,3で螺旋状にずれて葉先が元の葉の向きに戻り,また1,2,3と,120度ずつずれて,また元の葉の向きに戻るという螺旋状の葉の付き方を繰り返します。なんだか難しくなってきたので,今日はこの辺でやめておきます。