2021/08/06

今年(2021)辛丑の暦
江戸時代からずっと暦の形式は変わらず現在でも写真のような形式をが取られています。
これは安倍晴明の「ホキ内伝」にある牛頭天王が妻を娶りに南の海に出掛け,8大龍王の沙掲羅の三女の頗梨采女(はりさいじょ)を娶り,やがて八人の子どもを産み,方位を司る八将神になったものです。この八人がそれぞれ方位に位置付けられています。
牛頭天王が金神(こんじん)となり,天道神,またスサノウノミコトになります。また牛頭天王の妻,頗梨采女は歳徳神(年神)となり福をもたらします。この歳徳神がスサノウノミコトの妻,稲田姫となります。
では暦に書いてある順にその神さまが五行の「木・火・土・金・水」の何に該当するのかを見てみます。
太歳神-木星
大将軍-金星
太陰神-土星 太歳神の妃
歳刑神-水星
歳破神-土星 太歳神-木星の反対側にいる
歳殺神-金星
黄旛神-食を起こす羅睺星(らこうせい)土を司る空想上の星
豹尾神-いつも黄旛神の反対側にいる計都星(けいとせい)。これも想像上の星
これらの方位を司る神々が恵方や忌方を示しています。
吉方とされる歳徳神は今年は南南東に配されていて,2月に恵方巻を食べたのは歳徳神のいる南南東を向いて食べたのでした。
さて,これらの「木・火・土・金・水」という五元素は五行にそのまま配当され,天体の惑星にもなります。「木星・火星・土星・金星・水星」です。これにもちろん「太陽・月」が入り,中国の天文学では紀元前から観測を続け膨大な天体データを取り続けてきました。これらのデータから相似性を探して規則性を見つけたりしてきました。
史記には次のような文があります。
土星が水星と会合すると五穀の実りは豊かだが,事はうまくゆかず,敗軍があることになる。だからその位置に相当する国は大事を行うことができぬ。土星が出る時は領土を亡失し,土星が入る時は土地を獲得する。金星と合する時は流行病や内乱があって,土地を敵に取られる。上p251平凡社
多分この史記の記述も過去のデータから共通性を見いだして,このように書いているのだろうと思います。
そこで土星と水星が会合する天文現象がどの程度あるのか,天文ソフトで調べてみました。
期間は西暦1500年~2050年までの550年間で検索しました。会合時の離角は一度以内にしました。すると「1403/02/14 06:22 0゚51'」から「2049/02/05 19:07 * 0゚24'」の合まで239回ありました。そのうち地平線の下で起こるものが121回あります。下の写真のように土星と水星が会合します。2018年1月13日の最近あった合を軌道と一緒に出してみました。

土星と水星の合
550年間で239回ということは単純に見えなくても2年に一回は土星と水星の会合が起きているという計算になり,多いようにも思えます。また物事が大きく変化すると言われる年「癸酉」の当たり年と重なる確率はどうかと調べたら,たった一回1801年に起きた土星と水星の会合だけが一致するだけでした。その他の干支とも会合する年とを数えたげてみましたが,特別に多い干支は見つかりませんでした。天で起きることは地にも影響し,人にも影響するという「天・地・人」の三才説は中国の天文の思想ですが,やはり彗星は妖気星と言ったり,日食や月食を不吉なことと考えたことから出ているかもしれません。その辺の真偽は私にも分かりません。
では史記の文の終わりに出てくる土星と金星との会合はどうでしょうか。

土星と金星との会合 今年 2021/02/07 09:00 0゚54'に起きた合を出してみました。
同じ条件で検索すると550年間で269回あります。これも地平線下や昼間で見えない合も入れてあります。やはり2年に一回平均で土星と金星の会合は起きていることになります。流行病や内乱が2年に一回平均で起きているとはこの世の中では安心して生きてはいられない程の頻度です。
昔からの暦は毎年方位が変わるわけで,更に大将軍などは3年間も同じ方位に留まっているように決められています。これではいつまで待っても中々事が起こせません。そこでやがて恐い神々は遊行して歩くようになりました。恐い神様が移動するわけですからいなくなればその方位は一定期間吉方に変わるわけです。
暦をよく見ていくと一体いつからが吉なのか,分からなくなるほど複雑です。