fc2ブログ

歴史講座「昔語り伊藤正子の世界」終わる

IMG_8657-7s.jpg
夜明け前

昨日新田公民館で歴史講座「昔語り伊藤正子の世界」のお話を終えた。
会場には,正子さんの家族や正子さんの娘さん,そして正子さんの母よしのさんの実家の永浦家の関係の方々に来ていただき,正子さんの昔話を懐かしく聴きながらの笑いあり涙ありの楽しい会となりました。
わざわざおいで頂いた皆様にも感謝申し上げます。
私はと言うと,一番前にいらした女の方が正子さんの馬鹿婿の話を聴いて,身もだえしながら笑っていて,今にも呼吸困難で倒れそうな姿を見て、つられて笑ってしまいました。

「ああ、伊藤正子さんの昔語りは今でもこんなに人を幸せにするんだ」
と,納得しました。

IMG_8725-7s.jpg
夜明け前

昔話も何回も味わうことで伊藤正子さんの姿が彷彿と甦ってくるような気がします。
改めて折々にふれ,味わい直すごとに昔語り伊藤正子さんの世界を見いだせる気がした楽しい会となりました。
公民館関係者の方々,正子さんの昔話を読んでいただいた伊藤さんにも感謝申し上げます。


スポンサーサイト



伊藤正子の昔話を読む-兄弟物 忠兵衛と忠太郎③永浦誠喜との比較-

DSC_1168-7s.jpg
夜明けの天の川

さて「伊藤正子の昔話を読む-兄弟物 忠兵衛と忠太郎③」です
兄弟物の「忠兵衛と忠太郎」を,まずは伊藤正子の語りで,次に全く同じ「忠兵衛と忠太郎」を永浦誠喜の語りで読んでみました。
そして今日は,二人の「忠兵衛と忠太郎」を比較してみます。
まずは,二人の話の決定的な違いに気付かれましたか。そうなんです。兄弟は兄が忠兵衛で,弟が忠太郎ということまですっかり同じですが,兄と弟の役割が正反対なのです。伊藤正子の話では,兄が山賊になり,弟が正直者です。永浦誠喜の話では,兄が正直者で,弟が山賊なのです。同じルーツを持つ二人の話なのに,どうして正反対の設定にして,語ってきたのでしょうか。今日はそれについてお話したいと思っています。まず二人の語りの違いを分かりやすくするために表にしてみました。

続きを読む

伊藤正子の昔話を読む-兄弟物 忠兵衛と忠太郎②-

3月20iss-7s
天の川を駆けるISS

伊藤正子の語る「忠兵衛と忠太郎」は如何でしたか。結構丁寧に読めば,時間もかかりますね。
伊藤正子の「忠兵衛と忠太郎」は,文字数にして3281文字で,ゆっくり読んでも15分はかかります。内容描写も的確で,丁寧に語られ,構成の緻密さが感じられる話になっています。この話に限らず,伊藤正子の語りは,丁寧で細部まで行き渡った背景まで語られ,聞く者に寄り添ってよく理解されるように語られていきます。
今回の「忠兵衛と忠太郎」について比較してみても,伊藤正子の「忠兵衛と忠太郎」は,3281文字,永浦誠喜は,1395文字となっており,伊藤正子の話は,永浦誠喜の語りの2.5倍弱に達しています。
伊藤正子は,よふさんの娘であるよしのさんを母として昔話を聞いてきました。つまり母から娘へ,そしてまたその娘へと三代にわたる母からの直伝という伝承経路です。普通は,昔話も経由地(人)が多くなるほど変異は進む確率は高くなるでしょう。しかし,むしろここで注目したい点は,伝承経路が,女性同士の空間を伝っているということ。女性ならではの社会環境を受けながら話も進化していったことが考えられます。女性として,嫁に行って家庭を持つこと,母になること,子どもを育てる事などの社会環境を受け入れて生きる女性の智恵が,昔話の伝播と重なり合いながら語られていたということです。語り手は,常に昔話を聞いてくれる相手に(男性だったら男性,女性だったら女性)配慮しながら,相手の幸せを願いながら語っていたことがこのことから分かります。
その語り手と聞き手の間に生まれる,かけがえのない空間が,相手を大切にしてあげる配慮に満ちていたのです。
それでは,今度はよふさんから内孫として直接聞いてきた永浦誠喜さんに,伊藤正子さんと同じ「忠兵衛と忠太郎」を語っていただきましょう。聞いた後で,二人の「忠兵衛と忠太郎」を比べて見て下さい。あれっ。と気付きます。

続きを読む

伊藤正子の昔話を読む-兄弟物 忠兵衛と忠太郎-

DSC_1126-7s.jpg
灯台の光 3月20日撮影

夕方にまだ雁の声がします
声のする方を見ますと,三羽の雁がくっつくように飛んでいました
もう北へ帰るよと残っている仲間に知らせているように感じました

さて,伊豆沼読書会は,今年,「伊藤正子の昔話を読む」というテーマで新田出身の昔語り伊藤正子の語りをもう一度皆で味わっていこうと取り組み始めました。伊藤正子さんは大正15年(1926)生まれ,平成29年(2017)5月31日に亡くなりました。享年92歳でした。あと3年で伊藤正子生誕100年という記念すべき年を迎えます。97年前の人を再度取り上げるのは,何よりも伊藤正子さんが優れた昔語りであり,その昔話の数々が今に伝えられているからです。
これから何回かにわたり,伊藤正子さん自身が文字に起こした昔語りを紹介していきます。
今日は,聞いた人達が皆,もう一度あの話を聞きたいという人気の作品,兄弟ものの「忠兵衛と忠太郎」です。この作品も「雉も鳴かずば」と同じようにルーツを辿るために,永浦誠喜氏の「忠兵衛と忠太郎」と比較しながら読んでいきます。同じルーツを持つ二人の話が思わぬことで違いを生んでいきます。今日はまず伊藤正子の語る「忠兵衛と忠太郎」です。
少し長いのでたたんでおきます。クリックして開いてお読み下さい。

続きを読む

昔語り研究-永浦誠喜,伊藤正子の語りから-

DSC_1727-7s.jpg
民話ゆうわ座第九回伝承のみちすじをたどる-永浦誠喜さん,伊藤正子さんの語りから-

昨日12月11日仙台メディアテークで,「民話ゆうわ座第九回伝承のみちすじをたどる-永浦誠喜さん,伊藤正子さんの語りから-」が行われた。永浦誠喜さんと伊藤正子さん,すぐれた昔語りの名人である二人は,実はよふさんというおばあさんから昔語りを聞いたという同一の起源をもっている。これは実に珍しく,昔語りの伝承系統やバリエーション(変異)を探る上でも,二人のジェンダーの違いから来る語りという点でも貴重な記録となるだろう。昔はそれを永浦誠喜さんの男語り,よふさんの娘のよしのさん経由の正子さんの女語りという言い方をしたが,実に興味深い記録の掘り起こしとなった。

DSC_1746-7s.jpg
民話ゆうわ座第九回伝承のみちすじをたどる-永浦誠喜さん,伊藤正子さんの語りから-
まず始めに
「ハチとアリの魚の配分」(永浦誠喜)
「アリとハチとクモのお伊勢参り」(伊藤正子)から始まり

「ケヤキ買い」(伊藤正子)
「石巻からケヤキ買いに」(永浦誠喜)を比べ聞き,双方の

「キジも鳴かずば」(永浦誠喜)
「キジも鳴かずば」(伊藤正子)の微妙な違いに気付き

「尻鳴りへら」の題材で
「さいしんへら」(伊藤正子)
「尻鳴りへら」(永浦誠喜)のクライマックスを迎えた

二人の語りの違いについては改めて別記事で述べたい。

伊藤正子さん2
濱口竜介・酒井耕監督の映画「うたうひと」の小野和子さん(左)と伊藤正子さん(右)

一人の話者から派生した昔語りの伝承系統,昔語りの変異(バリエーション),性別(ジェンダー)による語りの系譜変化という最も興味深い問題が余すことなく提示された会となった。
改めてこのテーマの価値に意味を見いだした関係者の方々の盡力に感謝したい。

DSC_6450-7tr.jpg
ハクチョウの出発 伊豆沼