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賢治は『青の詩人』

棚田にかかる天の川棚田にかかる天の川

 晴れない日が続いています。すっきりしないかなあ。

『春と修羅』第一集全詩語句検索
『春と修羅』第一集は70編の詩,文字にして4万弱にのぼります。賢治は1922年から丸二年かけてこの詩集に打ち込んできました。妹とし子の死を乗り越えながらの挽歌群は歴史に残るレクイエムといえます。さて,わたしは先回,『銀河鉄道の夜』の語句を検索し,賢治がこの作品で一番用いた色は何色なのかを突き止めました。結果は「青」でした。84回出てきていたのでした。その記事はこちらです。
 そこで考えました。『銀河鉄道の夜』は,やっぱり夜を舞台としているから,当然「青」がたくさん使われて当たり前じゃないのと思ったのです。そこで,賢治の感覚が最も鋭く立ち現れてくる詩の言葉を吟味してみることにしたのです。
 語句の検索方法は同じです。『春と修羅』のテキストファイルをPDFファイルに変換し,アクロバットリーダーで開いて全語句を検索する方法です。以下が,その結果です。
青 124回
白 70回
黒 57回
赤 50回
銀 34回
金 31回
黄 29回
緑 24回

やっぱり「青」なのです。それも群を抜いています。平均すると「青」という語が使われる頻度は1.8。つまり一編の詩に1.8回は「青」という語を賢治は用いていたことになります。これはかなりの頻度といえます。賢治は『青の詩人』と言っていいかもしれません。興味ついでに他の語も検索してみました。特に頻度が多かった語を載せます。
雲 129回
風 89回
光(ひかり)86回
山 72回
そら 65回

これは自然と賢治の眼がどこに向いていたのかを明確にさせます。つまり賢治は自然の「何」をよく見ていたかという答えになるでしょう。そして最後にとても重要なことがあります。群を抜いて現れてきた語の第一位は「わたくし」なのです。143回もでてきています。これらから賢治の詩作の方法は,「わたくし」という中心から,雲や風やひかりに眼を向けながら変換された感覚を言語化していく過程そのものだったのです。

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棚田に映る天の川『銀河鉄道の夜』

棚田に天の川昇る
棚田に映る天の川

 先日載せた棚田の写真が人気があるそうで,まだ人気記事ランキング100位以内に残っています。記事はこちらです。うれしいことです。その棚田は地元でした。いろいろ歩いて見つけた棚田です。
 で,今夜の棚田は日本棚田百選に入っているわりあい有名な棚田です。宮城県の栗原市栗駒町西山地区の棚田です。家から一時間ほどで行けます。狭いながら自然がよく残された棚田でした。静かに夜が更けて,天の川が昇り,田面に星々が映りました。

今日の作品
『銀河鉄道の夜』を彩った色
今日はすごいタイトルです。題して「『銀河鉄道の夜』を彩った色」としました。賢治が『銀河鉄道の夜』の中でどんな「色」を意識的に,または無意識的に用いていたのかという調査です。
やり方は『銀河鉄道の夜』のテキストファイルをPDFファイルで保存し,アクロバットで開きます。そして色を指定して検索にかけるわけです。これによって,賢治が『銀河鉄道の夜』で一番多く使った色は何か,次に多く使われた色は何かがわかるわけです。以下に結果を載せます。
青  84
黒  49
白  41
赤  34
銀色 29
黄  16

圧倒的に「青」が多いですね。他の色の倍以上もあります。つまり『銀河鉄道の夜』は通奏低音のように青い色が敷き詰められているわけです。偶然なのは「白」と「黒」が同程度使われていたということもおもしろいです。この方法を他の作品でも用いることで,「賢治作品を彩った色」という研究論文も出来上がるでしょう。(なんちゃって)

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(2001/12)
鎌田 東二

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下弦の夜『星』

下弦の夜下弦の夜

 ただ静かな星空を・・・。
 それだけを願っています。
夢に天津乙女《あまつおとめ》の額《ひたえ》に紅《くれない》の星|戴《いただ》けるが現われて、言葉なく打ち招くままに誘われて丘にのぼれば、乙女は寄りそいて私語《ささや》くよう、君は恋を望みたもうか、はた自由を願いたもうかと問うに、自由の血は恋、恋の翼《つばさ》は自由なれば、われその一を欠く事を願わずと答う、乙女ほほえみつ、さればまず君に見するものありと遠く西の空を指《さ》し、よく眼《まなこ》定めて見たまえと言いすてていずこともなく消え失《う》せたり。詩人はこの夢を思い起こすや、跳《は》ね起きて東雲《しののめ》の空ようやく白きに、独《ひと》り家を出《い》で丘に登りぬ。西の空うち見やれば二つの小さき星、ひくく地にたれて薄き光を放てり、しばらくして東の空|金色《こんじき》に染まり、かの星の光|自《おのず》から消えて、地平線の上に現われし連山の影|黛《まゆずみ》のごとく峰々に戴く雪の色は夢よりも淡し、詩人が心は恍惚《こうこつ》の境に鎔《と》け、その目には涙あふれぬ。これ壮年の者ならでは知らぬ涙にて、この涙のむ者は地上にて望むもかいなき自由にあこがる。しかるに壮年の人よりこの涙を誘うもののうちにても、天外にそびゆる高峰《たかね》の雪の淡々《あわあわ》しく恋の夢路を俤《おもかげ》に写したらんごときに若《し》くものあらじ。

                                       国木田独歩『武蔵野』より『星』
ふーっ。この文章,ため息が出ます。
武蔵野 (岩波文庫)武蔵野 (岩波文庫)
(2006/02)
国木田 独歩

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