二十六夜待ち

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夜明けに沈む月


二十三夜待ち塔の石碑は以前よく見たものです。

十五夜の満月が過ぎ,日に日に月の出は遅くなり,二十三夜は下弦の月となる。その月の出は日が改まる夜中過ぎということになります。
月待ちの行事はやがて庚申信仰と結びついて,念仏を唱える講がよく開かれました。一晩中念仏を唱え,邪気を払いました。ここで庚申信仰の図像等を見てみましょう。庚申塔の本尊は青面金剛。下に「見ざる,聞かざる,言わざる」の猿が描かれています。この意味が「私の罪を見ないで下さい。聞かないで下さい。言わないで下さい」ということなのです。
庚申の夜は60日ごとにやってきます。ですから年に6回ほど庚申の日があります。この庚申の日の夜は寝ている人の身体から虫が抜け出して,天帝にその人の罪や穢れを報告する夜なのです。ですから人々はこの日の夜だけは夜更かしをして念仏を唱えたりしながら罪や穢れを払っていたのです。

ひころの里 351-2s
庚申塔 登米市中田町浅水長谷寺

「見ざる。聞かざる。言わざる」の猿がいますね。私の罪を見ないで下さい。聞かないで下さい。言わないで下さいという意味があるのです。

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雲海を照らす月 栗駒山

その男が吹く能管は月の上に吹く風を思い起こさせた
男は言った。
「能管はあの世に響く音。龍笛はこの世に響く音です」

十六夜の月の出を待っていたさよ子は,その能管の音に誘われて川原に下りた

その日からさよ子は男の笛を聴くために,弁当づくりが始まった。
十六夜の月の夜だった。
男が能管を吹いていたのは三年前に死んだ妻の魂を鎮める意味もあった。一通り吹いた後人影を感じて見ると,死んだ妻が居た。
いや,初めて会ったさよ子という人だった。死んだ妻にそっくりであった。

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月夜に飛ぶホタル

日々,弁当は二つつくられた。
17日の弁当は立待月の弁当と言った
18日の弁当は居待月の弁当と言った
19日の弁当は寝待ち月の弁当と言った
20日の弁当は更待ち月弁当と言った
21日の弁当は下弦の月弁当と言った

男の笛の音を聴き,さよ子は月の光で弁当を食べた。

男は言った
「明日は二十六夜です。来てくれはりますか」

名月とISS 077-2s
伊豆沼に降りる月

月齢26,二十六夜の月の夜。
さよ子は夜道を弁当を二つ持って急いだ。
まだ大文字山の山の端はほの明るくもなっていなかった。なにせ二十六夜の月の出は午前3時だからだ。

よく晴れていた。星もよく見える。

ところが,今日は月が昇らないと男は言った。
今日は妻の三回目の命日だと言った。二十六夜の晩に妻は死んだ。今夜の笛は妻をあの世に送り返す笛にすると言う。

鋭い音を立てて能管は鳴り始めた。

世界谷地 017-2s
世界谷地のニッコウキスゲの花に昇る月

妻の面影を振り切るように笛の音はやんだ。
男はすぐさま能管を思い切り折った。

あの世の妻と交信できる笛を男は自分から断ち切った。



この話は以前紹介した「京都人の密かな愉しみ」という私の好きなテレビ番組の「月待ち」という話をなぞってみました。
ご了承下さい。

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