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親鸞の是信への申しつけ

北天-2gs
北の空を巡るホタル

ふと気付くと自分の底深く沈んでいったものが何の拍子か湧き水のように意識の表面を波立たせている。
それらは,とうの昔の子どもの頃にいだいたものだったり,遠く忘れていたはずのものが間近に吹き寄せられて今の自分の扉をほとほとと叩いていることに気付くのだ。そんな気まぐれな想念に身をまかせてつらつらと思いを走らせるのは実は自分の失われたものを確かめておきたいという気持ちがあってのことでしょう。
例えばあの美しい景色は実際に見たものか,夢の中でみたものか判然とはしないが,すすきの野原に爽やかな青空が広がっていたりする。そんな景色が突然に頭に浮かび上がってくる。小泉八雲が加賀の潜戸(くけど)に行った折,「とぎれとぎれの波の音が,窟の奥に進むにつれ,しゃがれた音を木霊させながら,ついには賽の河原のような大きな亡霊のつぶやきの声に変わっていく」と書くとき,彼はこの世から滲み出る何かに気付いているのだと思います。すっかり日常の中で忘れていた非日常に気付かされることがしばしばあります。


親鸞が東北に先に来ていた弟子の是信に伝えおくようにと東北に赴く専空にこう言ったと「親鸞聖人正統伝」に出てきます。
「ただ陸奥のこと最(いと)いぶかしく思うぞ。是より彼国に赴,是心(是信のこと)覺圓,無為心等に教示し,立川の邪義を防がんこと,御坊に非(あらず)して誰かあるべき」
是信は親鸞の弟子で記録では「是信 奥州和賀住」と書かれ,弟子は「能信(是信の子供?後に本誓寺二世),仏道,覺妙 自余門弟之を略す」(建保五年1218年)とあるのでその他にも多くの弟子がいたようです。岩手,秋田,青森に真宗を広めた最初の人ということになります。是信は和賀に住んでいたというところから,その門流を和賀門徒と言われています。是信の記録は遠野の西教寺にも伝わっています。
 是信は承安三年(1173)生まれで86歳まで生きたと言うので正嘉二年(1258)没ということになります。この言葉は専空はもう五年にわたって是信を助けて岩手で布教活動をしているけれど,まだ立川流という好ましくない教えを正しく教化させねばならない。このことは大切なことで,専空お前が手伝わなくて誰がやるのだということを言っています。この文書が暦仁元年(1238)ですから,五年を遡っても1234年の文暦年間には和賀に下向して布教活動に力を入れていたことになります(1231年の説あり)。

ここに「立川流」という言葉が出て来ます。これがずっと気になっていたのです。未開の東北に13世紀から立川流の教義が入っていたことに驚いたのです。親鸞が「邪義立川流」と言いますが,男女和合を実践する立川流は仏教の異端とされ,排除されてきました。それでも尚,是信が生きていた時代の1173~1258年頃には東北の岩手まで入って興隆を遂げようとしていた事実があったのでしょう。親鸞は邪教立川流の広がりをひどく恐れて,弟子達に申し渡していたのです。立川流はwikiでは「立川流(たちかわりゅう)は日本密教の真言宗の一法流である。真言立川流(しんごんたちかわりゅう)とも。通説では平安末期の仁寛(生年不詳-1114)が流祖とされ、南北朝期に文観(1278-1357)によって大成されたと伝えられる。宥快らによって邪教とされ、立川流の典籍は焼き捨てられた。そのため伝存する資料が少なく、実態は不明である。宥快の『宝鏡鈔』(14世紀)は男女陰陽の道を即身成仏の秘術としているとして立川流を指弾し、男女交合を説いたことが一般に立川流の特徴とされている。」髑髏を本尊とすると書かれています。現在ではほとんど資料もなく,批判する資料が残されているだけです。
私はこの立川流のことを中沢新一の1990年代の「悪党の時代」を読んで知りましたが,親鸞の並々ならぬ警戒を考えると当時の宗派の状況が更に興味深く思えるのでした。

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朝霧晴れて

歴史では後醍醐天皇の時代が終わり,破綻したことで日本の軸が大きくぶれたように考えられているようです。この天皇や幕府の権力が喪失した時代,それまで手厚く保護の対象になっていた宗教もまたその後ろ盾を失います。中心があって安定した社会構造が南北朝時代に崩れてしまうことになります。この時代に一体何が起きていたのか,それが中沢新一のおじさんに当たる網野善彦が「異形の輩」と言った「悪党」の誕生につながります。むしろ悪は,この世の者ならぬという意味もあって,社会では聖や賤,穢れ,差別と深く根っこで結びついている処世力とも考えられています。親鸞が「悪人正機説」を唱えますが,どうして悪人もなのかと考えるときに,悪人のとらえ方が今の時代の正悪の悪でいいのかとも思ってしまいます。一遍も東北にやってきていますが,一遍の平等意識と伝道が大衆に大きく支持されていたことを「一遍上人絵詞」等の絵巻から読み取っています。


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