FC2ブログ

蛇神の行方-宇賀神-

田んぼの見回り
田んぼの見回り

この連載「蛇神の行方」は蛇が絵馬や石碑に多く取り上げられていることに気付いたことがきっかけでした。
は虫類が苦手な人には疎(うと)まれがちな蛇なのにどうしてこんなに多く祀られることになったのか。確かに世界の日本の神話や「蛇女房」などの日本の昔話などに蛇は主役として出てきます。石碑を調べてみてもその通りだと思いました。蛇つながりで「己巳供養塔」「巳待塔」「蛇神」「蛇王権現」「庚申塔」「龍神」と結びついていきます。石碑の年代からすると己巳信仰が古くからあり,やがて同じ日待ち信仰の庚申信仰に合体・吸収されていったのではと思いました。その点を先回までのお話の中で展開してきました。信仰の形態を変えても蛇は力強く生き続け,室町期から現代まで七福神の中の弁財天の使わしめとしていよいよ効験高い存在として名を馳せ続けています。今回,蛇に着目した研究者の吉野裕子氏の諸作を本棚から引っ張り出して再び読み流しましたが,なんでも蛇に結びつけるようで私には少し食傷気味でした。しかし吉野氏の視点は有意義なものがあります。

DSC_9627s147s-2-2.jpg迫町新田駒林の「駒形神社」にある芸術性の高い蛇神

上の写真は先回も紹介しましたが,遊佐萬という地元の人が立てた蛇神です。その言われを聞くと藪の刈り払い中に誤って蛇を殺してしまったのだそうです。そこで蛇の供養のために石碑を建てたのだそうです。このような話はよく聞きます。やはり蛇は昔から特別な存在で,それは祟りも大きいと感じた故の建立だったのでしょう。
先回の記事で「遠野物語」18からの蛇の祟りから一家が毒きのこを食べて全滅するという話はあながちフィクションだとしても昔はあり得る話として伝えられてきたと思われます。

DSC_9414s飯島白蛇弁財天
迫町新田飯島にある「白蛇弁財天」

白蛇が弁財天の使わしめということから室町期辺りから更に蛇に対する信仰は勢いづいていったと思われます。弁財天そのものが壽福財宝をもたらす効験高い神様でした。弁財天がこの世に現われ出た姿が蛇なのです。弁財天は仏像図彙では次のように描かれます。
弁財天2
女天で琵琶を持っているのは様々な技能の習得に効く神様だったからでしょう。しかし弁財天の「財」の文字が入ることで金銀財宝の意味が強くなります。「弁才天」と書くとさらに話し方,文筆活動,書道や音楽,芸術と才覚の向上を示す神様となります。また八臂(手)の弁才天もあります。

しかし白蛇はこの弁才天だけの特許ではないのです。
登米市南方にある大嶽山興福寺の明治初期の覚書にそれを見つけました。月毎に配付されるお札の覚書です。
一月 としとく神
二月 はらい神
三月 水神
四月 明神
五月 山の神
六月 えびす
七月 大黒さま
八月 天照大神宮
九月 かぎ
十月 宇賀神
十一月蒼前さま
かぎは計量秤の神様,蒼前さまは馬の神様。そして宇賀神です。
宇賀神は現代ではすっかり忘れられた神様ですが,昔はかなりポピュラーでベスト11に入るほどの神様だったようです。まずは写真を見て下さい。

達谷の窟 092-2s
宇賀神像

頭は老人の顔をして,身体は蛇です。奇妙なものです。
祭るときには器に水を張りこの像を入れて呪文を唱えるのです。後ろにももの形をした宝珠形の蓋のようなものがあります。小さくハートの形にくり抜かれていますが,蓋をした時に外形が宝珠になります。そしてくりぬかれたハート形から老人の目が覗きます。
「この神王は西方浄刹に在り無量壽仏と号し娑婆世界に在って如意輪観音と称す。」とあって弁才天ではなく如意輪観音が実体とする説明もあります。宇賀神の宇は天,賀は大地を表すという。つまり天地すべてを統べる福徳を与える神で,効験極まりない究極の権現がこの宇賀神ということになります。また宇賀は宇迦とも音感的に似ているので宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)倉稲魂命(うかのみたまのみこと)として食べ物の神と関連づけられたりもします。とにかく本当のことは分からず宇賀神を説明する経典も偽経とも言われています。更にこの「宇加耶」は梵語では白蛇を意味しているそうです。

しかし,この宇賀神が寺のお札祭にわざわざ配られている位ですから当時かなり人気があったと思われます。明治に入り神仏分離令で素性よろしからぬ謎めいた権現などは廃止するという中で一気にこの神様は時代に消され,人々の記憶から消し去られていったのでしょう。しかしこの宇賀神が弁才天と一体になった像も存在しています。「宇賀弁才天」です。なんと弁才天の頭上にこの宇賀神が載っているのです。この宇賀弁才天については山本ひろ子氏が「異神」で取り上げています。

次回の蛇は,山本ひろ子氏の「異神」から「宇賀弁才天」を取り上げてみます。


にほんブログ村 写真ブログ ネイチャーフォトへ
にほんブログ村
スポンサーサイト