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新・遠野物語-蛇神の行方4「宇賀弁才天」-

達谷の窟 092-2s
宇賀神

前回の記事から
(宇賀神は)頭は老人の顔をして,身体は蛇です。奇妙なものです。
祭るときには器に水を張りこの像を入れて呪文を唱えるのです。後ろにももの形をした宝珠形の蓋のようなものがあります。小さくハートの形にくり抜かれていますが,蓋をした時に外形が宝珠になります。そしてくりぬかれたハート形から老人の目が覗きます。
①「この神王は西方浄刹に在り無量壽仏と号し娑婆世界に在って如意輪観音と称す。」とあって弁才天ではなく如意輪観音が実体とする説明もあります。宇賀神の宇は天,賀は大地を表すという。つまり天地すべてを統べる福徳を与える神で,効験極まりない究極の権現がこの宇賀神ということになります。
②また宇賀は宇迦とも音感的に似ているので宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)倉稲魂命(うかのみたまのみこと)として食べ物の神と関連づけられたりもします。とにかく本当のことは分からず宇賀神を説明する経典も偽経とも言われています。
③更にこの「宇加耶」は梵語では白蛇を意味しているそうです。
喜田貞吉に「福神研究」(昭和10)という本があります。この中で喜田氏は宇賀神を「宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)倉稲魂命(うかのみたまのみこと)として食べ物の神のから来ている」としています。宇賀神の「宇賀」は食べ物の神「ウカ」と解してよいという考え方です。②の音感の流れから結論づけています。とにかくポピュラーになっていた割には宇賀神は様々な性格を持ち合わせて,如意輪観音と言われたり,蛇だと思えば狐との関連もあって稲荷神に思われたり,弁財天と結びつき福禄寿がもたらされる蛇に姿を変えたりします。とにかく仏教での儀軌が定まって仏像図彙として形態が決定されているわけでもないので(天部には入っていますが)輪郭が不思議な神様になっています。
ところが更に驚くべき事にこの宇賀神が弁才天と合体する「宇賀弁才天」という仏があるのです。早速写真を見てみましょう。

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宇賀弁才天 山本ひろ子「異神」(1998)平凡社(口絵から複写)仏像は山形正善院

不思議です。第一仏像の頭頂部に鳥居です。そして鳥居の奥に「頭は老人の顔をして,身体は蛇」の宇賀神がいるのです。さらにアップの写真があります。見てみましょう。

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宇賀弁才天 山本ひろ子「異神」(1998)平凡社(口絵から複写)仏像は山形正善院

確かに弁才天の頭頂部の鳥居の奥には宇賀神のぎょろついた目玉が見えます。どうしてこのような仏像ができたのでしょうか。
弁才天は分かります。音楽,弁舌の上達などの職能の向上をもたらす仏で,後に「弁財天」という言い方になり福禄寿財宝などをもたらす効験高いポピュラーな弁天様になって現代でもお金を洗うとお金持ちになる弁天として人気を博しています。正徳 2年( 1712年 )の「和漢三才図会」には日本五弁天が紹介され,「竹生島,榎島(江ノ島),厳島,金花山(金華山のこと),富士山」の弁天が指定されています。そして全国の弁天の使わしめが蛇となっています。ずばり白蛇です。
山本ひろ子「異神」(1998)平凡社に図像が載っていたのでそのまま載せます。
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山本ひろ子「異神」(1998)平凡社から複写 図像は叡山文庫版「弁財天三部経略琉」

図像を見ると八臂(手)の弁才天です。昨日紹介した二臂(手)の琵琶を持った弁才天とは違います。
弁財天仏像図彙より

宇賀弁財天は福徳を主る。是れ観音所変の弁才なり。この時は 「オン」字を種字と為す。 「オン」字は即ち宝珠なる故なり。とあり,弁財天は「オン」の種字を使い,一方弁才天は「サ」の種字を使うようです。
宇賀神の身体が蛇身だということは「蛇身是れ三毒極成の体なる故に三悪道を摂る」という意味があります。三毒とは仏教の言う最も根本的な三つの煩悩、貪・瞋・癡(とん・じん・ち)のことを言います。この三毒を統括できるということが三悪道を摂るという意味です。 宇賀神の老人の顔は万徳を表すということだそうです。そして八臂(手)の弁才天の持ち物は左手は鉾,輪宝,宝弓,宝珠を持ち,右手は剣,棒,鑰(かぎ),宝箭(ほうせん)となる。如意宝珠の円光が頂にあるのだそうです。
また「この神王は西方浄刹に在り無量壽仏と号し娑婆世界に在って如意輪観音と称す。」と最初に書きましたが,宇賀弁才天が即如意輪観音となると説かれます。つまり宇賀弁才天は如意輪観音と同体だと言うのです。釈迦は宇賀弁才天のことをこう言います。「私が過去無量劫中のフシャ仏在世の時,私は「貧者」だったが宇賀神法を受持すると,たちまち「大福長者」になった。その名を「福宝光明女」という。」と宇賀弁才天の由緒が語られていきます。
山本ひろ子「異神」(1998)平凡社の中の「宇賀弁才天」の章は供養儀式にまで至ります。しかしかなり難解になりますので次回におもしろかったポイントだけ書きます。
次回は弁財天の垂迹の姿,蛇の伝説を考えてみます。


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