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伊勢参り犬-鈴木省三『仙臺風俗誌』-

伊勢参り犬1伊勢参り犬2
伊勢参り犬「仙臺風俗志」よりスケッチ

 司馬遼太郎の『街道をゆく』26は「嵯峨散歩・仙台・石巻」ですが,この中に伊勢参り犬が出てきます。多分司馬遼太郎が鈴木省三(雨香)の『仙臺風俗誌』(昭和12)を読んでから,仙台を訪れたのかもしれません。さて,この伊勢参り犬の話は全国にあり,ご主人の代理で伊勢参りをしてくるという何とも忠犬ハチ公並の立派な犬です。
 昔,毎年伊勢参りをしていたおじいさん。妻に先立たれ,自分もけがをして肝心の伊勢参りができません。縁側で悩んでいると,飼い犬が「ワン」と決意を固めたように鳴きました。お前が行ってくれるのかいと聞くと,またワンと鳴きます。
というわけで,首には代理として伊勢参りをしますという手紙とお札用の金子を入れて出掛けることになりました。困ったら人様に相談するのだぞと言い含め,諸注意も言いつけますと犬はワンと吠えて出掛けていきました。この犬が鈴木省三の住む宮城県名取郡岩沼町を通ったから大騒ぎとなり,鈴木省三がそのことを深く聞きつけ,『仙臺風俗誌』に書き付けるようになったのが経緯だそうです。さて本当のことでしょうか。実はそのような代理で伊勢参りをする犬がいたことは確かなようです。『神判記實』に明和8年とあります。
「明和8年という年の春秋にかけて有りつる神異の話」
「4月16日の上方より犬の参宮をすとて,市中騒ぎ合えり。その毛,赤白色の斑にして,小振りなる雄犬なりし。」
 そして,その参拝の仕方ときたら,すごいものです。引用を続けます。
「真一文字にかけ出て,豊受宮の北御門口より手洗い場に至り,水を飲みて,本宮の広前に平伏して拝礼の様をなせり。」
 すごいです。読みましたか。きちんと手洗い場で口を清め,平伏して拝んだのです。犬が,ですよ。

 ちなみにこの犬。ちゃんと金子と交換にお札をもらい,ご主人の家に戻ったそうです。ああ,いい話だ。
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