FC2ブログ

ビブリア古書堂の事件手帖より「春と修羅」

朝2.3 2013-02-03 449s
 今人気の剛力彩芽扮する主人公篠川栞子の「ビブリア古書堂の事件手帖」がテレビで月曜9時で始まっています。このドラマの原作の3巻目に出てくる本が宮澤賢治の「春と修羅」です。

ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
(2012/06/21)
三上 延

商品詳細を見る


 大切にしていた宮澤賢治の「春と修羅」の初版本が何者かに盗まれたので探して欲しいという依頼が篠川栞子に持ち込まれます。ここから篠川栞子のうんちくからの推理が冴え渡ります。
朝2.3 2013-02-03 478s
ここからネタバレなので読んでいない方は覚悟して読んでください。
宮澤賢治の「春と修羅」は賢治の自費出版で1000部印刷されました。
しかし刊行後も幾度となく作品に手を入れたり,直したりしていたのでした。また,思い切って削除を考えていた作品もあったようです。それは刊行された「春と修羅」の本そのものに書き込む形で加除修正が加えられていました。
 それが少なくても3冊あって,その3冊を所有していた人から,宮澤家本,菊池氏所蔵本,藤原氏所蔵本と言われています。

 なんと言っても一番思い出すのが「永訣の朝」のラストです。まず初版本のラストです。
どうかこれが天上のアイスクリームになつて

   おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに

   わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ
次に直した宮澤家本です。
どうかこれが兜卒の天の食に変って

   やがてはおまへとみんなとに

   聖い資糧をもたらすことを

   わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ
「天上のアイスクリーム」が「兜卒の天の食」に変わっている訳です。これが賢治が行った手直しです。

朝2.3 2013-02-03 166s
 さて,ビブリア古書堂では,2冊ある「春と修羅」の内,汚い方,書き込みがあったりする方の本が盗まれるわけですが,これが実は賢治直筆の手直しを記録した本だという設定なのです。
 では,そのなくなった本は宮澤家本,藤原本,菊池本のどれだと作者の三上延氏は考えたのでしょうか。

 作中に昴くんが出てきます。
 実は「春と修羅」の中に「昴」という作品があるのです。
 この昴くん,本好きで「春と修羅」の中の詩を諳んじることができます。それくらい「春と修羅」が好きだという設定です。一番好きな作品はというと「真空溶媒」だと昴くんは言います。

 栞子さんはすぐ口ずさみます。
「融銅はまだ眩(くら)めかず

   白いハロウも燃えたたず」
昴くんが後を続けます。
「地平線ばかり明るくなつたり陰(かげ)つたり

   はんぶん溶けたり澱んだり」そう初版本の文章です。

現在刊行されている本の殆どが加筆された宮澤家本を採用しています。こうです。
「藍銅いろの地平線だけ

   明るくなつたり陰(かげ)つたり

   はんぶん溶けたり澱んだり」


決定的でした。

朝2.3 2013-02-03 561s

 ビブリア古書堂では,宮澤賢治のテキストのバリエーションに着目して見事に謎解きにたどり着きました。
うーん。おもしろいです。
 アマゾンの本のコーナーの読者からの書評ではこの「ビブリア古書堂の事件手帖3」はトーンダウンしていると手厳しく評されていましたが,なんの,賢治のテキストの多重性に着目して,ストーリーの中に上手に当てはめました。
朝2.3 2013-02-03 532s
 では,盗まれた賢治自身自ら手を加えた本とは宮澤家本,藤原本,菊池本のどれだというのでしょうという問いに対する答えは・・・。
朝2.3 2013-02-03 286s
 興味を持たれた方は「ビブリア古書堂の事件手帖3」をどうぞ。

(すべての写真は今日の伊豆沼の様子から)

にほんブログ村 写真ブログ ネイチャーフォトへ
にほんブログ村
関連記事

コメント

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

Re: タイトルなし

sizukuさん。いつもありがとうございます。
宮澤賢治の記事もちょこちょこと載せていますが,もっときちんと調べて書きたいものがたくさんあります。時間がほしいです。でも少しずつ進めていきます。

ビブリア古書堂,面白そうですね。
「春と修羅」の直筆の校正が入った初版本ですか…知りませんでした。

それにしても、透き通るような白鳥と水辺のキラキラした光、美しいです。
冬は光、春は影…そんな感じ
非公開コメント

トラックバック

「ビブリア古書堂の事件手帖3栞子さんと消えない絆」三上延

鎌倉の片隅にあるビブリア古書堂は、その佇まいに似合わず様々な客が訪れる。すっかり常連の賑やかなあの人や、困惑するような珍客も。人々は懐かしい本に想いを込める。それらは予期せぬ人と人の絆を表出させることも。美しき女店主は頁をめくるように、古書に秘められたその「言葉」を読みとっていく。彼女と無骨な青年店員が、その妙なる絆を目の当たりにしたとき思うのは?絆はとても近いところにもあるのかもしれない―...