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川をさかのぼる-高橋克彦「火怨」アテルイの心-

リコーダー講習会 359-2s
髙橋克彦の「火怨」を読み終わった。かなりの日にちがかかっての読了でした。
自分たちの住む山や川や空を守るための戦い。そうアテルイは言いました。
故郷を守るための戦い。
そして「自分たちの家族を守るために戦いを始め,さらに子ども達の子どもを守るために戦いをやめる。」とアテルイは言いました。
火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)
(2002/10/16)
高橋 克彦

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火怨 下 北の燿星アテルイ (講談社文庫)火怨 下 北の燿星アテルイ (講談社文庫)
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高橋 克彦

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わたしたちは雨土(あめつち)です。蝦夷とは山であり,川であり,空であり,花であり,木なのです。
アテルイの名前が史料に出て来るのは2か所だけらしいのですが,著者の髙橋克彦氏は全国に残るアテルイ伝説を丹念に調べ上げることで,その同異を比較し,地理的な空間の軌跡を再現していくことを試みました。実に丹念で緻密な作業から導き出されたこの小説は驚きに値します。
リコーダー講習会 096-2s
そして,伝説同士をつなぎ合わせるというパッチワークの作業がこれだけの成果を生むという歴史のアプローチの仕方が私には新鮮でした。例えば,源義経に興味をもつ人は自然と「吾妻鏡」にはどう書いてあるのだろう,「義経記」にはどう書いてあるのだろうと調べたくなります。自分の未知の部分を解明していこうとする気持ちが働くのです。朝廷から見た東北。東北から見た朝廷。ただの獣のような存在という蝦夷と断じられたことに対する怒り。辺境に住む者に対する都人の偏見。
リコーダー講習会 977-23s
高橋克彦は今までにこの東北の地が五度誤った征服を受けてきたと「東北・蝦夷の魂」で言います。

東北・蝦夷の魂東北・蝦夷の魂
(2013/03/15)
高橋克彦

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この本の内容紹介にはこう書かれています。
東北は古代から中央政権に蹂躙され続けた。阿弖流為(あてるい)対坂上田村麻呂、安倍貞任・藤原経清対源頼義、藤原泰衡対源頼朝、九戸政実対豊臣秀吉、奥羽越列藩同盟対明治新政府。5度の侵略戦に敗れ、奪われ続けた資源と労働力。そして残された放射能。しかしそれでも「和」の精神で立ち上がる東北人へ、直木賞作家からの魂のメッセージ。
柳田国男は「雪国の春」で熱帯の稲が寒冷な東北の地に国策として栽培されたことには,無理があったのではないかと言っていますが,冷害や干害そして,氾濫の歴史を見ると,その通りだとも言いたくなります。
雪国の春  柳田国男が歩いた東北 (角川ソフィア文庫)雪国の春 柳田国男が歩いた東北 (角川ソフィア文庫)
(2011/11/25)
柳田 国男

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そして最後には原発事故か。

アテルイは「自分たちの住む山や川や空を守るための戦い。」と言いました。
故郷を守るための戦い。
そして「自分たちの家族を守るために戦いを始め,さらに子ども達の子どもを守るために戦いをやめる。」と言いました。

リコーダー講習会 767s
もう一度言いたくなります。

わたしたちは雨土(あめつち)です。蝦夷とは山であり,川であり,空であり,花であり,木なのです。
東北の地に生きる人の心の中には,アテルイが感じ取ったこの血が流れ続けているのです。

写真はすべて栗駒山

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