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クマの住む森-針葉広葉混交樹林を目指して-

ブナの力2
ブナの神様(朝日連峰)

友だちから紹介してもらった「多種共存の森」という本を読んでいた。

多種共存の森: 1000年続く森と林業の恵み多種共存の森: 1000年続く森と林業の恵み
(2013/10/29)
清和 研二

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著者の研究フィールドがどうやら栗駒山らしいと書いてあるというからです。栗駒山だったら地元ので,ここ数年通い詰めているなので読んで見ようと思ったわけです。
確かに文中には栗駒山の世界谷地の奥,さらに登った直径1mのブナの巨木群とあるので私もよく行くところです。
著者はこのフィールドで「ジャンゼン-コンネル仮説」を検証したと書いてあります。
このことについてはもっと読んで整理していきたいところですが,今日は生物多様性が保証される針葉広葉樹混交樹林の復権を願う筆者の「クマをに留め置く-餌の多様性」というところから話していきます。

ブナの実やドングリの実が不作だった年はクマが餌を求めて山から下りて来るとよく言われます。

ブナ
栗駒山

従ってブナの花の開花数が少ない年は実の結実度も低くなって麓にデントコーンや栗などを求めて降りてくるようです。これって本当なのだろうかと思って,ブナの実が豊作・不作だった年とクマの目撃情報の件数とを比べてみました。まとめたのが次のような表になります。

宮城県 ブナの開花・結実結果宮城県
  開花結実クマの目撃件数
平成 17年豊作 4.7 4.3 
18年皆無10.2672
19年凶作1.51.3282
20年凶作3.71.7439
21年並作3.32360
22年皆無3.20.5538
23年凶作3.71.5262
24年並作 2.8 2.2908
25年 豊作 3.75.0 509



セル内の色と数値は,緑が豊作(数値は豊凶指数のこと3.5以上が豊作を示す),黄色が並作(豊凶指数2以上3.5未満)オレンジ色が凶作(1以上2未満),赤色は皆無(1未満)という意味です。このページを参照しました。またクマの目撃件数は宮城県のクマの目撃情報から計算して出しました。

うーん。やはりブナの実の不作とクマの目撃件数との間にはあるつながりがありそうな気がします。でもはっきりとはこれだけでは言えません。
ブナ展葉前線
ブナ展葉前線上昇中(栗駒山

しかしブナが不作だからと言って,すぐクマが人里に降りてくるものでしょうか。それは人工の森林の単純さゆえかもしれないのです。日本の森林占有率は67%で,フィンランドの73%に次いで世界第2位だそうです。その森林のうちの2/5(1000万ha)が,もう人工林になって暗い杉林や桧の林,トドマツやカラマツの針葉樹の世界になっているのです。ただ一種類だけの貧しい人工林の森にクマが餌を求めても死んでしまうでしょう。ブナが不作でもミズナラなどのどんぐりがある。どんぐりがなくてもトチの実があるというようにクマが段階的に餌を採ることができる豊かな樹種をもった森林が必要なのです。
「クマを山に留め置くには人工林に広葉樹を導入し,広葉樹との混交林にしていくのが有効で,かつ根本的な解決方法だと考えられる」(p115)
クマだけではありません。カモシカもイノシシもサルも安心して山の中で暮らせるのです。また麓の山里の過疎化による荒れも山から下りてくる動物にとっては自然と人里に入るきっかけをつくっていることも確かでしょう。

ブナ
ブナ展葉の季節(栗駒山

今日はクマを育てる森林の話でしたが,人工林でも人が入らなくなって荒れてきているのが現状でしょう。
林業白書に依れば森林の機能回復によってもたらされる価値は洪水や災害防止,温暖化防止,水資源等を貨幣価値にすると50兆円を超えます。日本の莫大な資産です。これをどううまく活用していくのかをクマを通して考えさせられたのでした。
大きなブナの木
大きく広がるブナ(栗駒山)


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