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ニホンオオカミのこと

雨強シ
栗駒山雨強く(須川湖)6/8

日曜日はびしょびしょになりながら栗駒山を歩きました。
何せカメラはすぐ雨がレンズに付いて曇ります。それでも山は雨ならではの景色が広がっていました。

さて私は平日は夕食を摂るとすぐ眠くなってしまい,本を読みながら寝てしまうことが多いのですが,先日はある処を見て,はたと眠気が覚めました。
絶滅したニホンオオカミの記述を見つけたからです。

その本は江戸時代の岩手県の現一の関市東山町の肝入(昔の村長さんのような人)の手控え(備忘録)です。磐井郡東山藤沢本郷と住所にある「萬留書(よろずとめがき)」です。
その中に「穴籠狼討取候届出之事」というタイトルを見つけたからです。「穴に籠っていた狼を討取ったこと」ということです。日付が享保十六年五月七日とあります。とすると1731年のことです。書き出してみます。
東山藤澤本郷の内けしきやり山に狼穴籠候を見付狼子三ツ生れ懸御目候上耳尾切捨申候所相違無之候若他領より取参候段訴人も御座候ハバ如何様ニも可被仰付候 以上
享保十六年五月七日                        藤澤本郷山立猟師 次三郎
                                      五人組        平 助
                                      同           弥七郎
                                      同           清右衛門
                                      同           十三郎
                                      肝入         與左衛門
大肝入 白石與次右衛門 様


雨強シ2
栗駒山雨強く(秋田大谷地)6/8

これを訳すと「東山藤澤本郷の中のけしきやり山で子の狼が三匹穴の中に籠っているのを見付けた。そこで耳や尾を切捨てたのを持ってきたので見たところ狼に相違ないようだ。しかし他領より持ってきたのではないかという人もいて,どうしたらよいものか困っている。指示をお待ちしている。 以上」というように読める。

察するにどうも狼とは珍しく,他領より運び込んだということも気になるという件は当時の狼の存在を暗に示しているようにも思われてくる。わざわざ手控え(書き留めていた)とはいえ,狼のことがこのように話題に上がること自体が狼を狩猟としては特別の存在と考えていたのではないだろうか。そしてまた必要に応じて届け出るように義務づけられていたとも考えられる。
明治初期にはもう南部藩が狼の駆除について奨励金をつけていて,わざわざ運ばせてその輸送料まで負担していたようだ。

おたん生会 538-2gs
虹の橋(赤川)下の赤川まで落差170mが一気に落ち込んでいます

享保年間から,狼を仕留めたとなれば現物を見せて,その届け出をさせていたのではないかと感じさせる。明治時代には牧畜が盛んになり,家畜を襲うということで賞金付きで多くの狼が殺された。当時の様子を見るとオオカミの雄を殺すと8円,雌だと7円が支給されていたようだ。そして本当にオオカミだと認めるように県庁まで運ばせていてそれにかかった輸送料も支給されていたらしい。

日本最後の狼は奈良県東吉野村鷲家口で雄が1905年(明治38年)1月23日に捕獲されたのが最後らしいが,どうも狼は近代化の中で特別な動物であったと感じさせる不思議さがある。

おたん生会 544s
休憩中のハルゼミ

熊谷達也に「山背郷(やませごう)」という2000-2002年頃に書かれた短編集がある。その中に「御犬殿」という話がある。狼の話である。中では狼のことを「山犬」と読んだりしていた。宮城県登米郡米川の狼河原という地名が今でも残っている。ここに東京大学で動物学の講師をしている野崎という学者が狼を探しにやってくるという話である。昭和25年という設定になっている。
山背郷 (集英社文庫)山背郷 (集英社文庫)
(2004/12)
熊谷 達也

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とうとう罠をかけて銃で仕留めるのだが,狼かどうかは文中ではわからない。

ついでに狼というとこの映画を思い出す。大変いい映画だったと思う。
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()
Charles Martin Smith、Brian Dennehy 他

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動物映画としての名作だと思う。もちろん主人公は狼である。
でもオオカミのことを強く印象づけられたのは子どもの頃読んだシートン動物記の「オオカミ王ロボ」だったろう。オオカミという未知の動物がこんなにも気高い存在だったと教えられた作品だった。

おたん生会 655s
曇る源頭部

もちろん栗駒山にも狼はいただろう。こんな記録がある。
狼_12
「明治時代東北地方におけるニホンオオカミの駆除」(2010)中沢智恵子氏論文からの引用です。




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