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水をめぐる物語

平成18年10月9日(月)栗駒山 042-ss

「これが今生(こんじょう)の別れ」
彼女はそう心の中で呟いた。

弟が道を走って下ってゆく後ろ姿がどんどん小さくなっていく。
そしてやがてかき消されるように彼方に見えなくなった。
16歳になったばかりのまだ幼さが残る彼女の目に芯のある光が見える。これでいいのだ。彼女は先程弟が下りていった道をしっかりとした足取りで下りていって,坂のたもとにある沼にやってきた。

焼石岳 733s
沼は木々の中に静まりかえっていた。
彼女はふと着物の懐に手を入れた。母親からもらったお守りをさわろうとしたのだった。しかしまさぐったその指はあきらめた。先程弟にそのお守りは渡したのだった。今走って逃げている弟の持っている地蔵菩薩に手を合わせて祈った。
「弟をお助け下さい。私の命に代えても。わたくしは大丈夫です。」
彼女は小さなわら靴を脱いで沼のほとりにそろえた。

栗駒秋田側 402s
日暮れにならんとしているのに戻らぬ姉弟のことを聞いた大夫は怒りのままにどなり散らしすぐ追っ手を送り探させた。
そして沼のほとりにそろえてあった安寿のわら靴をみつけた。

「水に入りやがった。」

栗駒秋田側 545-2s

波はなく凪になっていた。
8歳の安徳天皇は祖母の時子にかき抱かれながらもはやと感じました。
「どうするのじゃ」少しおびえた声で幼子は聞きました。

「波の下には,それは美しい都がございます。」

幼子の体は祖母の腕の中でゆっくりと海の底に沈んでいった。

033s.jpg

天鼓は天から下りてきた不思議な鼓(つつみ)とともに育ちました。
天鼓の打つ鼓の音は不思議な美しさをもっていました。その鼓の音を聞いた者はいっとき目の前に極楽浄土が現れる気持ちになりました。病に嘆く者はその鼓の音で病が癒えました。

時の皇帝はその話を聞き,その鼓を召し出すように言いました。しかし天鼓はその命に背き,捕らえられ呂水に沈められ死んでしまいました。残った鼓は誰がたたいても音を発しませんでした。ただ天鼓の父がたたくと妙なる音が鳴りました。皇帝はその音を聞き,天鼓を殺めたことを大変に悔いて呂水にやってきて管弦講の供養しました。すると水の中から天鼓が現れ出で,管弦に合わせて自ら鼓を打ちました。
ほのぼのと夜も明ける頃,管弦もやむと同時に天鼓の妙なる鼓の音もいつしか消えていました。
天鼓は皇帝に感謝し水の底に帰って行きました。
安寿と厨子王,平家物語の安徳天皇の入水,「天鼓」という水にまつわる三つの話でした。この他にも銀河鉄道の夜のカンパネルラなど,美しい魂が水のそばにあるという物語がたくさんあります。これらの水をめぐる話は私たちに暗に何を示そうとしているのでしょうか。


このブログは写真だけでなく,その写真の奥にある様々なわたしの好きなものを手控え覚え書きのように書き記そうとしてはじめたものでした。そしてあっと言う間に5年が過ぎました。見ていただいた方々の優しいコメントやメッセージによって少しずつ私の心も開かれていったこの5年間でもありました。心から感謝申し上げます。そしてこれからも自分の心の糸を解きほぐしながら細々と続けていければと思っております。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。


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