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白い鳥『宮澤賢治伝』

白鳥2最後の一蹴り
白鳥1さあ,スタート
白鳥3いくぞーー

 オオハクチョウは体重10キロを超えますから,飛ぶのも助走が必要です。しかし,飛ぶ姿はやはり白く,美しく優雅です。近くを飛ぶと大きな羽を広げて2M以上にも見え,羽が繰り出す風圧も感じ取れます。飛び立ちは実にダイナミックで沼の端にいても,水を蹴る大きな音が響いてきます。
 私はハクチョウの助走と飛び立ちの正面からの写真を,画面いっぱいに収めたいと思って通っています。しかし,満足する写真は一度も撮ったことがありません。夜でも飛びますから,目もちゃんと見えているようです。月明かりの夜,飛んでいるハクチョウを撮れたらなんと美しいことでしょう。一度も夜飛ぶハクチョウの写真を見たことはありません。ガンもそうですが,ハクチョウも飛び立つときには声を掛け合います。すると飛ぼうとする仲間も集まってきます。互いに鳴き合って,飛ぶ確認をします。これが飛び立つきっかけになります。しかし,体の動きを注意深く見ていないと,いつ助走しだすかわかりません。その決定的な瞬間をとらえるため,2時間,3時間と立ちっぱなしの時間が続きます。
 でも何度見ても,白い羽が太陽に輝く飛ぶ姿を見ると,神の鳥であり,魂を乗せた鳥だと感ぜずにはいられません。

 白鳥は 悲しからずや 空の蒼 海の蒼にも 染まず漂う

 宮澤賢治は妹が死んだ後,『白い鳥』という詩で,妹がハクチョウになって飛んでいると詩に詠いました

白い鳥(抄)

 二疋の大きな白い鳥が
 鋭くかなしく啼きかはしながら
 しめった朝の日光を飛んでゐる
 それはわたくしのいもうとだ
 死んだわたくしのいもうとだ
 兄が来たのであんなにかなしく啼いてゐる

   (それは一応はまちがひだけれども
    まったくまちがひとは言はれない)

 あんなにかなしく啼きながら
 朝のひかりをとんでゐる
   (あさの日光ではなくて
    熟してつかれたひるすぎらしい
    夜どほしあるいゐるために
    そんな Vague(バーグ)な気がするので
    ちゃんと今朝あのひしげて融けた金(キン)の液体が
    青い夢の北上山地からのぼったのだ)

 なぜそれらの鳥は二羽
 そんなにかなしくきこえるか
 それはじぶんにすくふちからをうしなったとき
 わたくしのいもうとをもうしなった
 そのかなしみによるのだが

    (ゆふべは柏ばやしの月あかりのなか
     けさはすずらんの花のむらがりのなかで
     なんべんわたくしはその名を呼び
     またたれともわからない声が
     人のない野原のはてからこたへてきて
     わたくしを嘲笑したことか)

 そのかなしみによるのだが
 またほんたうにあの声もかなしいのだ
 それらは白くひるがへり
 いまむかふの湿地、青い芦のなかに降りる
 降りやうとしてまたのぼる


 よく晴れた高い空でコォーと鳴いて飛んでいく白いハクチョウの姿は見る心を奪います。
 今日の本
 堀尾青史『宮澤賢治伝』中公文庫
年譜 宮沢賢治伝 (中公文庫)年譜 宮沢賢治伝 (中公文庫)
(1991/02)
堀尾 青史

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 宮澤賢治のことを知るバイブルとも言える本です。私はこの本を何回読み返したかわかりません。
 私が,現在気になっていることは,賢治という人は,年が改まるということをきっかけにして,新しいことにチャレンジする人ではないかということです。賢治にとって,新年とは去年と違う自分を見いだすという意味があったに違いありません。別に特別な思いではありませんが・・・。
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