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新・遠野物語-山伏について-

内沼 284-2s
やさしい光に包まれていたい

修験・山伏の話です。
昔互市というものがあり,方々に市が立つ日がありました。露店がずらりと並んでいて,そこでは生活雑雑貨,作物の苗等が農繁期を前に売られていました。小さい頃よく連れられて買い物に互市に出かけたものです。その中でも一段と人だかりができているところがあり,なんだろうと輪の中心の方に行くと山伏が説法していたのを思い出します。周りの人は皆熱心に山伏の朗々たる声に引きつけられて聞いていました。昭和40年代初めまでは全国の津々浦々でこんな光景が見られていたのです。

山伏は遠野物語にも出てきます。この山伏の存在が東北の人々の信仰の姿を甦らせるには重要なキーワードになると考えて興味が赴くままに調べてきました。羽黒修験と宮城県北部,岩手県南部のつながりは重要な部分と見てきたわけです。しかし何もここだけではなく中世から近世にかけて修験と地域との結びつきは切っても切れないものがあります。そんな様子を生き生きと描いているのが,藤沢周平の「春秋山伏記」です。

春秋山伏記 (新潮文庫)春秋山伏記 (新潮文庫)
(1984/02)
藤沢 周平

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この作品の中で修験が村々には必ずいて,村の問題やいざこざ,病気治し,狐憑きの除霊,様々な人間関係の調停役と八面六臂の活躍をしてきたことが分かります。村に最新の情報をもたらし,他地域とつながり最も難しい問題の処理に当たっていた事実は推してはかることが出来ます。
この物語では最後にさらわれた子どもの救出という山の民とのつながりも示唆させる興味深い設定もあります。遠野物語にもよく出てくる神隠しと重ねて考えると歴史的な事実と神隠しがどのようにつながっているのかも考える糸口になるのではと妄想をたくましくしてしまいます。

このように山伏の存在は中世から近世の日本の村々に深く入り込んで,文化を引っ張り,医療,裁判の分野まで広く村の共同体を支えていた存在だったと考えられます。また伊勢参り,熊野参りツアーを企画し,独占したいたのも修験の全国ネットワークを支えていたのです。更に村人を募って修行させて地域のリーダーとして育成させたりもしていました。当時の文書を見ると江戸時代後期には各村からの百姓の「入峰者一人も之無く」という衰退と窮状を訴える文書もあります。
さて,宮城県史の中に修験道に関する記述もありそれを読んで見ると幕府からの修験の取り扱いを明確にする「修験の身分」という逸話が載っていました。そこでその話があった所,南三陸志津川に訪ねて行ってみたことがありました。
志津川の荒戸浜。ここに荒澤神社というところがあります。
この荒澤神社(和光院)は明治維新前は和光院という修験の寺でした。
当時の修験の身分というものを考えさせる話が残っています。
和光院は滝不動として知られ,県指定の平泉経一巻を蔵する。政宗が慶長14(1609)年,仙台大橋の用材にこの寺の杉25本を伐り送った。その代償として850文(八石五斗四升)を賜り,代々御黒印,御朱印を与えられていた。御朱印を受けるために代替わり毎に登城していた。和光院はこの寄付地以外には百姓地を持たず人別帳には載っているが百姓とは思っていなかった。人足,御郡役,高がかりの手伝い,御貸上等も命ぜられることはなかった。

しかしある年(享保以降不明)5月上御手伝として一貫(一石)に一歩の割合で肝入長三郎方で割り当て,小肝入太兵衛方より組頭を以て申し来った。御寄進地でもすべて申しつけるというのなら出すが,他の地方と異なる割り当て方と聞いたので一応問い合わせた。

しかし何の返事もなく翌年一月登米郡黒沼(佐沼)代官所より至急出頭せよと肝入を通して言ってきた。

「百姓前を以て尋ねる故,袈裟を脱げ。御貸上延引の段(引き延ばしている理由)を述べよ。」と言う。

「百姓とは心得ていません。」
「いいや少しでも耕作しているのであれば百姓だ。百姓の身分として扱うのであるからとにかく袈裟を脱げ。」
「この衣鉢は本寺より許されて着用しているものです」

衣を脱がぬとどうなるか分からない様子だったので,袈裟を脱ぎ,御朱印賜る来歴を述べた。
この話から修験という身分は百姓扱いの身分であったことが分かります。加持祈祷などをしながら生活費に充てたり,また神楽を舞って寄付を受けたりしながら土地の隅に野菜をつくり細々と生活を立てていたことでしょう。護符なども勝手に配ったりすることは特に他地域ではできなかったのです。それでも和光院は直院になっています。それなりの本山からの保証もあったのだと思われます。しかし収入の割合に応じて末寺の者は本寺に権利料を払っていました。

遠野物語には「山伏」「山臥」「善知識」などがいずれも重要な役として出てきます。これらの人々が村の信仰を一手に担っていました。


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