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手紙『幸福の無数の断片』

雲雲の遷移

 『遠野物語』の27にその手紙は出てきます。話の筋は次のようなものです。

 ある家の主人,用向きに出掛けた帰りのこと,若い女に一通の手紙を託された。
 「物見山の中腹にある沼に行って,手を叩けば宛名の人が出てきます。この手紙を渡してください。」
 主人は請け合いはしたが,道々何か気に掛かり,途中,六部(山伏)に会ったとき思い切ってその手紙のことを話した。六部は手紙を開いて読んでから云った。
 「この手紙をこのまま渡したら,あなたには大いなる災いがくる。書き換えてあげよう。」
主人は書き換えた手紙を持ち,沼から出てきた若い女に約束通り渡した。そして,その書き換えられた手紙を読み,礼として黄金が出る小さな石臼をもらった。

 どうも最初の手紙には「この男を取って喰え」とか書かれているのだろう。なぜ,このような手紙が渡されるのだろうか。ある悪意をもって手紙が託され,その手紙を運んだ者に災いがもたらされるという昔話は他にもある。ギリシャ神話にも,イギリスの昔話,ドイツの伝説集にもあるという。沼に届けてほしいと頼んだ若い女も,それを受け取る若い女も,人ではない大蛇か龍か,何かであろう。他にも,手紙を託すのは,人間に化けた河童だったりする。そして,災いを避けるために,手紙が書き換えられるという昔話も他にもいろいろあると聞く。
 この手紙を使うという方法は一体何を意味しているのだろうか。そして,なぜわさわざ手紙を託すという間接的で,回りくどいやり方で,目的を遂げようとするのだろうか。何か隠されたメッセージがこの話の中にあるのではないかと思う。

今日の本
『幸福の無数の断片』 中沢新一 河出文庫
幸福の無数の断片 (河出文庫―BUNGEI Collection)幸福の無数の断片 (河出文庫―BUNGEI Collection)
(1992/10)
中沢 新一

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