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遠野物語-不思議な呪文-その2

穂高 1455-2s
ザイテングラードのお花畑から前穂高Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ峰を望む

さて今日も奥穂高に登ったいろいろな写真と共に「遠野物語-不思議な呪文-その2」をお送りします。よろしくお付き合いください。
まずお詫びと訂正です。
昨日私は遠野の小友地区に古くから伝わっている「座敷念仏」の中に「阿字十方三世仏 弥字一切諸菩薩 陀字八方諸聖経 皆量阿弥陀仏」というどの宗派にも伝わっていない不思議な真言の呪文があった,とお話ししました。それに内藤正敏氏が気付いて,「遠野物語の原風景」(2010)の中の「不思議な真言念仏と中世の宗教空間」という章でこの呪文に考察を加えていました。そして内藤氏はついに「続大蔵経」の中に同じ呪文を発見したと書きました。これは「続大蔵経」ではなく,正しくは「大日本続蔵経」です。お詫びして訂正いたします。昨日の記事の部分も赤い文字で訂正しておきました。失礼致しました。

で,その「大日本続蔵経」の第一輯第三套(とう)第五冊にその呪文が出てきたわけです。そのお経は「仏説阿弥陀仏根本秘密神呪経」です。内藤氏はこの長年の謎に終止符を打ったわけです。すごい発見です。

内藤正敏「遠野物語の原風景

その「阿字十方三世仏 弥字一切諸菩薩 陀字八方諸聖経 皆量阿弥陀仏」という呪文は原典に載っていた呪文と最後がちょっとだけ違っていたのでした。最後の「皆量阿弥陀仏」が原典と思われる「仏説阿弥陀仏根本秘密神呪経」の中では「三字之中是具足」となっていたのです。この違いはどこから生じてきたのでしょうか。
まず七字四行のこの経の最初の文字に気を付けますと「阿,弥,陀」となります。
阿字十方三世仏 弥字一切諸菩薩 陀字八方諸聖経 三字之中是具足
原典の最後の「三字之中是具足」の「三字」とは阿弥陀の三文字の中にこの世のすべてが入っている(具足)という意味になります。
つまり阿弥陀様の「阿と弥と陀」を取って最初の出だしにしつらえたお経だと分かります。このような方法を「字解き」というそうです。ちょっと暗号めいた感じを入れるわけです。

例えば中学時代に習った「唐衣(からころも)/きつつなれにし/妻しあれば/はるばる来ぬる/旅をしぞ思ふ(410) 」古今集の在原業平の和歌の区切りの冒頭の一文字を取ってつなげると「か,き,つ,ば,た」という言葉が暗号のように込められていたという「折句(おりく)」の手法ですね。このような手法が特に難しいお経等を説明したり,解説したりするときによく使われていたのです。その時に絵も見せながら一緒に解説するととても分かりやすくなるわけです。絵を使ったりするすることを「絵解き」と言われていました。教えを広めるためにはまず分かりやすさが大切なわけです。

 このように絵を使ったり,言葉で解説するときの工夫を「唱導指導」と言って,行脚する僧にとっては大切な積まなくてはいけない修行だったはずです。この阿字十方三世仏 弥字一切諸菩薩 陀字八方諸聖経 三字之中是具足という呪文も,そうした「絵解き」「字解き」の布教の一端として生まれてきた呪文ではないでしょうか。

穂高 1586-2s
水飲みに雪渓に来たサル

そして,最後の「三字之中是具足」が唱導指導を受けたある聖僧によって,分かりやすくした結果,遠野に伝わっては「皆量阿弥陀仏」と改変されたのではないかと思われます。

うーん。おもしろいです。まるで上質のミステリーを読んでいる気分です。

穂高 1738-s
穂高にいたアサギマダラ。彼らも東南アジアまで渡っていくのでしょうか。

すると次のような疑問が湧きます。
この呪文の最後に気を付けて調べると,この呪文を遠野に伝えた人物と山形に呪文を伝えた人物と宮城県に伝えた人物が同定ができるのではないか。
この呪文の最後が「皆量阿弥陀仏」という遠野と同じ文句で終わっていれば,山形,宮城,埼玉,群馬のポイントがにわかに結ばれることになるでしょう。つまり同一の唱導指導を受けた聖僧か,聖集団が風のように東国を通り過ぎ布教していったものだと分かってくると思ったのです。

この歴史ミステリーに憑かれて4か月過ぎました。いろいろな本を読んで少しずつ見えてきたことをこのように今回自分なりにまとめていきます。


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