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人が住まなくなった家の柿の木『山の人生 その2』

南の空
人が住まなくなった家に残る柿の木

昨日の続きです。

 柳田國男が『山の人生』の最初にもってきた「一 山に埋もれたる人生あること」の炭焼きが,二人の子供を殺した事件は,柳田自身が,特赦のために読んでいた予審調書の中に見つけたものであった。ところが,谷川健一がこれと似た話があることを指摘した。『奥美濃よもやま話』である。その中に「新四郎の事件」が出てくる。
谷川健一『柳田國男の民俗学』

 谷川は,この炭焼きの男、岐阜県明方村(現、明宝村)の新四郎の事件のことが、金子貞二「奥美濃よもやま話 三」に記されていることを指摘したのであった。そして,その話は「奥美濃よもやま話」では、新四郎が子供たちを殺してしまったのは、食べるのに困ったからではなく,新四郎の娘に起きた出来事が原因だと記されていたのである。
 新四郎の娘は,ある村の旧家に奉公に出ていたが、奉公先の家の嫁が、新四郎の娘と自分の夫の仲を疑うようになった。そして疑念を抱いた嫁が,娘に盗みの濡れ衣を着せて追い出そうとしたのである。無実の疑いをかけられて、家に帰ってきた娘に、新四郎とその娘の弟が同情して,一家心中を企てたというのが真相だというのである。

 では,なぜ予審調書には事実と違って,柳田が読んだように書かれていたのだろうか。
 どうやら調書を書いた係官が,貧困による心中にしたほうが心証がよくなると考え,作文をしたことになるそうだ。その方が裁判官の同情をかって罪が軽くなると考えたようである。
まさに,「書くことによって埋もれたる人生あること」ということになる。
新聞記事には次のように出たそうである。
 

実子二名を惨殺す(明治三十七年(1904)四月九日の岐阜日日新聞の記事)
 再昨(さいさく=三日前のこと)六日郡上郡奥明方村山中に於同村大字寒水新四郎なる者が実子二名を惨殺
せりとの急報に接し、八幡警察署田中署長は翌七日飛鳥江刑事、高岡医師を随へ検死の爲め出張したりと云
ふ。通信甚だ簡単にして要領を得ず後報を得て更に詳報する所あるべし。」


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谷川健一『柳田國男の民俗学』岩波新書
柳田国男の民俗学 (岩波新書)柳田国男の民俗学 (岩波新書)
(2001/06)
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