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あの景色が今は-大岡昇平「焚火」-

鳴子 074-2gs
あの夏の景色が

こうなっていた。
紅葉の今の景色

鳴子現像 013-2-1gs
今朝の曇の冴えない色ですが


大岡昇平の「焚火」は名作だと思う。
真っ赤な燃えさかる紅葉の中で,子どもも殺して自分も穴を掘って,そこで焚火をしてその火で死のうとする女の話である。こんなにめくるめく紅葉の景色を書いた作品は見当たらない。読み進めていくと,果たしてこの場所は十和田湖かと思う。人は自分の死に場所に鮮烈な紅葉の山を選ぶのだろうか。めらめらと燃え上がる空襲の炎と愛を求める女の情炎の炎,それらはくすぶるものではなくめらめらと怖いほどに燃えさかるものなのだ。人間とはいよいよ業の炎に包まれる。ところがどうだろう。雨が降り始めて一転してくすんだ紅葉になった時に女はとうとう死ぬことをやめ,子どもを負ぶい,冷たい紅葉の山の斜面をずるずると登り始め,雨に濡れたまま3キロもある温泉宿に助けを求める。
あれ程全山燃えさかる紅葉の山だったのに,ひと雨来ただけで死ぬことをやめる。
このことによって,大岡昇平が「焚火」で,死の話を書きたかったのではないことが分かる。どろどろに泥にまみれた女が雨の中を子どもを背負い3キロも助けを求めて歩き続けるという生きる話なのだ。
それにしてもこれ程に怪しく美しい紅葉を描いた作品をわたしは他に知らない。まぎれもなく紅葉は人にとって生きるに値する美と大岡昇平は受け取っていたのだ。



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