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雨の匂い

豊里日曜 069-2s
今朝の蕪栗沼

今日は久しぶりに写真を撮りましたが,雨の匂いがしました。
どこか重くしめった空気が体にまとわりついていたからでした。こんな日は音もくぐもって聞こえます。


昨日の記事で私は川端康成の「抒情歌」を引いた後で
「林へ行きたい」というトシは,「禽獣草木のうちに「あなた」や「私」を見つけ、次第に天地万物をおおらかに愛する心を取戻していく」ことを心から願っていたのかもしれません。
と柄にもなくしめくくったのですが,どうもすっきりしない気持ちでいました。
そして今日改めて川端康成の「抒情歌」を読み直してみたのです。そしてもう一度昨日のしめくくり部分を話したいと思ったのでした。

川端康成の「抒情歌」は輪廻転生の話が古代から世界各地に見られる最も美しい「抒情歌」と考えて話を始めています。そして予知能力や霊感を持った女の独白という形で話が展開していきます。当時心霊主義が日本に入ってきて,川端もまた不思議な世界に入れ込んでいった時期の1932(昭和7)年の作品です。この時期は賢治が死ぬ前の年に当たります。

トシが日本女子大学で成瀬仁蔵の倫理講義を受けていた折,メーテルリンクが紹介され,心霊主義の思潮が満ちていった時期でもあったわけです。トシはクリスチャンとしての成瀬の生き方や取り上げられたメーテルリンクの著作や思想に大きな関心を寄せていました。トシから賢治に紹介されたこともあるでしょう。例えば,トシ経由で『青い鳥』はもちろん『万有の神秘』1916,『タンタジールの死』1914 が紹介され,賢治も読んでいて「宗谷挽歌」の詩の中にも「 ( おまへがこゝへ来ないのは/タンタジールの扉のためか、/それは私とおまへを嘲笑するだらう。)」と書くまでになっていったとも考えられます。こうした心霊主義の流れが日本でも文学や文化面に広がって行った時期でした。新感覚派と言われた川端も同人と「文藝時代」を出す時期と一致しています。

豊里日曜 164-2gs
まっすぐにやってくる

さて「輪廻転生」や生まれ変わりの話,前世の話はギリシャ神話から始まり,仏教まで世界に広く行き渡っています。遠藤周作も死んだ妻が生まれ変わるというインドでの話「深い川」を書いたし,江戸期には平田篤胤の「勝五郎再生記聞」まで数多くの話があります。このような「輪廻転生」の話は川端にとっては今までの歴史が生み出した最も美しい抒情歌のような気がすると言うのです。前世は花であった者が現世では人となり,来世では蝶と生まれ変わる。それは美しい夢のようなおとぎ話のようだと言います。普通汎神論とも言われるこの考え方は「禽獣草木のうちにあなたや私を見つけ、次第に天地万物をおおらかに愛する心」と表現されたりしてきました。現代では汎神論は未開の文明の考え方とも言われています。しかし自然の万物に階層なく,平等で,同質という汎神論的な考え方は未だに魅力を持ち続けていることも確かです。
いったい人間は何千年もかけて人間と自然界の万物とを区別することに長い歴史的な努力を続けてきました。人間だけがという考え方で自然の万物を見て,それらをひたすら利用しようとしてきました。この人間至上主義という考え方は・・・。と品悪く言わず,川端は「抒情歌」の中でこう言っています。
なにも目の前の名の知れた花でなくてもよろしいのです。フランスのような遠い国の,名知らぬ山の,名知らぬ花に,あなたが生まれ変わっていらっしゃると思って,その花にものいいかけるのです。

幼く死んだ子どもは霊の世界に行ってから生い育ちます。地上のことをあまり知らないで育ったその汚れない子ども達はことに光で織った衣装をきて手には花を持っています。

私が死んだら一羽の白鳩か一茎のアネモネの花になりたいのであります。そう思う方が生きているときの心の愛がどんなに広々とのびやかなことでありましょう。

月だって星だって,それから動物や植物までが,みんな神さまと考えられて,その神さまというのがまたちっとも人間と変わりない感情で泣いたり笑ったりするギリシャ神話は裸で晴天の青草の上を踊るようにすこやかであります。

あなたもわたしもが夾竹桃の花となりまして,花粉を運ぶ胡蝶に結婚させてもらうことが遥かに美しいと思われます。
どうでしょう。賢治の童話を読んでいるような気になりませんか。このような心持ちは何も賢治の作品だけでなく,賢治自身の倫理観とも一致するような気もします。そしてそのような心持ちは実は私たちみんなが持っている心持ちであると言えませんかね。樺太の海岸で死んだ妹のトシと交信するという行為は,手を合わせて祈ることとなんら違うことはありません。トシが夢枕に立つことや賢治がトシの夢を見ることは自然で,実にリアルなことなのです。それをただ非科学的だと一蹴できるでしょうか。

今日は賢治の妹トシの命日です。


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