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銀河鉄道の起こり3

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伊豆沼に光舞い降りる

「銀河鉄道の夜」の作品についてお話を始めて3回目です。
「銀河鉄道の夜」が賢治自身によって紹介された1924年(大正13)12から年が明けすぐに「異途への出発」と称される三陸への旅を敢行したことは「銀河鉄道の夜」の作品の中に「異途への出発」の成果が現れ出て来るのではないかと考えることは自然のように思います。

この賢治の三陸旅行について、私自身も三陸を訪ねた記事は以下の通りです。

異途への出発
夜明けの海に立って-異途への出発-
異途への出発 その4-異界の旅は最後を迎え-

今回は賢治の三陸旅行が「銀河鉄道の夜」の作品にどう現われ出ているかを探ってみたいと思っています。この三陸旅行の旅の作品は次のようになっていて、「春と修羅」第二集に入っています。
異途への出発 1925/01/05
暁穹への嫉妬 1925/01/06
〔水平線と夕陽を浴びた雲〕〔断片〕 1925/01/07
発動機船〔断片〕 1925/01/08
旅程幻想 1925/01/08
峠 1925/01/09

これらの作品を改めて読んで見て、銀河鉄道の夜の中の文章や語彙に使われている様子はないかを確かめてみたのです。

結果的には類似点はあまり見つかりませんでした。ただ三陸旅行で見た景色が「銀河鉄道の夜」の「六 銀河ステーション」の文章に生きているのではないかと思えたのです。その部分を書き出してみます。最終形で追加された部分です。
ジョバンニは一生けん命延びあがって、その天の川の水を、見きはめやうとしましたが、どうしてもそれが、はっきりしませんでした。
(どうもぼくには水だかなんだかよくわからない。けれどもたしかにながれてゐる。そしてまるで風と区別されないやうにも見える。あんまりすきとほって、それに軽さうだから。)ジョバンニはひとりで呟きました。
 すると、どこかずうっと遠くで、なにかが大へんよろこんで、手を拍ったといふやうな気がしました。
 見ると、いまはもう、そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとほって、ときどき眼の加減か、ちらちら紫いろのこまかな波をたてたり、虹のやうにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、野原にはあっちにもこっちにも、燐光の三角標が、うつくしく立ってゐたのです。遠いものは小さく、近いものは大きく、遠いものは橙や黄いろではっきりし、近いものは青白く少しかすんで、或ひは三角形、或ひは四辺形、あるひは電や鎖の形、さまざまにならんで、野原いっぱい光ってゐるのでした。ジョバンニは、まるでどきどきして、頭をやけに振りました。するとほんたうに、そのきれいな野原中の青や橙や、いろいろかゞやく三角標も、てんでに息をつくやうに、ちらちらゆれたり顫えたりしました。(打ち消し線は削除された部分です)

この幻想的な天の川の透明な水のゆらぎの描写はとても素晴らしい文ですが、三陸旅行の詩群の「発動機船[断片]
                  一九二五、一、八、   
   水底の岩層も見え
   藻の群落も手にとるやうな
   アンデルゼンの夜の海を
   船は真鍮のラッパを吹いて〔以下空白〕」

この景色の透明性と夜の海の景色に通じるものがあります。この描写では発動機船に乗って夜間に進んでいますが夜の中でも深い透明性を知る水底の様子や藻の群落がすぐそこに手に取るように分かります。この 一九二五、一、八の日付のある断片「発動機船」の夜はどんな夜だったのでしょう。実は満2日前の13のが空高く皓々と海原を照らしていたのです。この夜の星図を見てみましょう。
発動機船の夜
発動機船に乗って1925.1.9の夜

どうでしょうか。夜の透明性の高い水の揺らぎや視線を起こすと夜の海の広がりや漁り火。西を見ると陸地の港や人家の灯の描写が文章によく合うと思います。
いまはもう、そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとほって、ときどき眼の加減か、ちらちら紫いろのこまかな波をたてたり、虹のやうにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、野原にはあっちにもこっちにも、燐光の三角標が、うつくしく立ってゐたのです。遠いものは小さく、近いものは大きく、遠いものは橙や黄いろではっきりし、近いものは青白く少しかすんで、或ひは三角形、或ひは四辺形、あるひは電や鎖の形、さまざまにならんで、野原いっぱい光ってゐるのでした。ジョバンニは、まるでどきどきして、頭をやけに振りました。するとほんたうに、そのきれいな野原中の青や橙や、いろいろかゞやく三角標も、てんでに息をつくやうに、ちらちらゆれたり顫えたりしました。
しかしこの景色の描写が満近い夜で夜の船の上で太平洋を臨んだ景色だともちろん断言はできません。そして晴れていたならば星々が明るい夜に南まで連なっています。夜明けであれば天の川が水平線上に見え始めます。
異途への出発-2s
異途への出発
このようなイメージで1/6の日付のある「暁穹への嫉妬」を読んで見ましょう。
薔薇輝石や雪のエッセンスを集めて、
ひかりけだかくかゞやきながら
その清麗なサファイア風の惑星を
溶かさうとするあけがたのそら
さっきはみちは渚をつたひ
波もねむたくゆれてゐたとき
星はあやしく澄みわたり
過冷な天の水そこで
青い合図(wink)をいくたびいくつも投げてゐた
それなのにいま
(ところがあいつはまん円なもんで
 リングもあれば月も七っつもってゐる
 第一あんなもの生きてもゐないし
 まあ行って見ろごそごそだぞ)と



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