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二十六夜待ち

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二十六夜待ち


二十六夜の金いろの鎌の形のおさまが、しづかにお登りになり ました。そこらはぼおっと明るくなり、下では虫が俄かにしいんし いんと鳴き出しました。

 遠くの瀬の音もはっきり聞えて参りました。

 おさまは今はすうっと桔梗いろの空におのぼりになりました。 それは不思議な黄金の船のやうに見えました。

 俄かにみんなは息がつまるやうに思ひました。それはそのおさ まの船の尖った右のへさきから、まるで花火のやうに美しい紫いろ のけむりのやうなものが、ばりばりばりと噴き出たからです。けむ りは見る間にたなびいて、おさまの下すっかり山の上に目もさめ るやうな紫の雲をつくりました。その雲の上に、金いろの立派な人 が三人まっすぐに立ってゐます。まん中の人はせいも高く、大きな 眼でぢっとこっちを見てゐます。衣のひだまで一一はっきりわかり ます。おさまをちりばめたやうな立派な瓔珞をかけてゐました。 おさまが丁度その方の頭のまはりに輪になりました。

 右と左に少し丈の低い立派な人が合掌して立ってゐました。その 円光はぼんやり黄金いろにかすみうしろにある青いも見えました。 雲がだんだんこっちへ近づくやうです。 宮沢賢治「二十六夜」より


東北地方には「二十六夜待塔」と言われる供養塔がよくあり、二十六夜待ちの信仰が盛んだったと言われています。引用したように二十六夜の夜は読経して夜を過ごし、明け方にが出ると「金いろの立派な人 が三人まっすぐに立ってゐます。まん中の人はせいも高く、大きな 眼でぢっとこっちを見てゐます。」 とあるように阿弥陀様が脇侍を連れて三人で現われるという信仰がありました。月の出を待ち、長い夜を念仏を唱えて静かに待っている姿を想像すると、なんとも洒落た夜の過ごし方のように感じます。

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説明入り

この二十六夜待ちを題材にした古い物語が中世の本のどこかにあるのではと想像します。
その話は染め物に心を傾けた女が子どものために丹精込めた着物を着せて生き別れとなり、子どもはその着物を着て艱難辛苦を経て父親や母親を探して訪ね歩く話ではないでしょうか。最後に母親が自分があつらえた着物を着た若者に再会し、自分の子どもだと知るのです。染め物に心傾ける母は愛染明王を大切にしています。藍染めと関わっているのが愛染明王の信仰と結びついており、二十六夜待ち信仰の本尊が愛染明王だからです。
「貴種流離譚」を思い起こさせるこの話は室町の御伽草子あたりにありそうな気がします。


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