FC2ブログ

新・遠野物語―消えた祠―

祠 007_8_9_fused-2s
妻の神

明治九年(1876)12月15日、修験者などの民間宗教者と結びつく、山野路傍に散在する神祠(山神、霊神祠)、仏堂(地蔵堂・辻堂)を社寺の境内に移すこと。

IMGP2947-2ssnew.jpg
消えた祠

たつの家から小さな沢沿いに穏やかな下り道を一町ばかり下るとそこに追分へと続く天王さんの祠がある。この祠は道しるべとなっていて峠から下りてきた道と出合う辻になっている。この祠は子どものたつにとっては何の神様かも分からなかったが,何か困ったときには必ず母もこの天王さんに来て神妙な顔をして拝んでいた。いつかたつもその真似をするようになり困ったことがなくても沢の水音を聞きながらこんもりとした杜をもつ天王さんに足を運んだ。特に二年前に傷寒(腸チフス)で死んだ弟を思わない日はなかったので何かある毎にお参りにやってきていた。
あんなに天王さんに懸命に拝んだのに・・・。拝み方や祈り方が下手なんだと自分の責任を感じてたつの心持ちは暗くなった。姉として弟に何もしてやれなかったという気持ちにさいなまれるのだった。一生懸命にな、やっていれば、直にいいことが起こるものだと父も母も言った。
今朝も朝早くお参りに行くと誰かが天王さんの鳥居に登っているように見えた。山伏の永仙さんが鳥居にはしごを架けて造作をしていた。
「なにしてるのじゃ」とたつが聞くと、びっくりして永仙さんが答えた。
「早起きだのう,たつか。表札を取ってるんじゃ」
「どうして?」
「この天王様の名前が変わったんじゃ。
名前が変わる?神様も名前が変わったりするのかと愕いた。
「どうして?」
「さあな。お上からの命令じゃ」
ふーん。たつはそれ以上は聞かなかったが、何のために神様の名前が変わったりするのか、全く違う世界の道理があることを知り、深入りすることは避けた。神様の名前さえも変えせるという神様以上の絶対権力があったのだと思い知らされた。
「何と言う名前になるの?」
「たつ神社となる」
「えっ」
「いやいや。津島神社となる。スサノウノミコトだ」
「スサノウノミコト?」
この言葉にも愕いた。スサノウノミコトとはなんなのか。たつは拝むのも忘れすぐさま家に立ち帰った。大変だと母に話した。



にほんブログ村 写真ブログへ
にほんブログ村
関連記事