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新・遠野物語-春蚕の上蔟(じょうぞく)-

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回転蔟(かいてんまぶし)を組み立てる

宮城県内でも,もう十軒ほどしかのこっていない蚕農家の一軒を登米市石越町に訪ねています。
この養蚕という伝統農業は時代的にも今でしか見学できない段階に来ています。私自身は幼い頃に蚕を飼っている祖父の実家を訪ねた折,ほの暗い中二階で蚕が桑の葉を食べる音や白い蚕をじっと見ていたことを懐かしく憶えています。あれからもう何十年が過ぎているでしょうか。農業の姿もすっかり変わりました。手の掛かる蚕を育てる農家は激減しました。桑畑は水田や果樹に変わり,辛うじて地名に残っているばかりです。また,農家の大きな中門や蚕を育てる中二階を持った昔の大きな家もなくなり,「こんにちは」と言って家に入ると土間のひんやりとした空気や入口脇に馬や牛がのーっと頭を出している光景も全く見られなくなりました。このような農家の風景を記録しておく時期に来ています。

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桑の枝に付いた蚕を条払機(じょうばらいき)にかけます。ざんざんと上下に震動するので蚕が桑の葉からふるい落とされます

蚕はいよいよ最終齢(5齢)を迎え繭をつくる時期を迎えました。そして夏至の6月21日に繭を作らせる「上蔟(じょうぞく)」という段階に入りました。その上蔟(じょうぞく)の作業を見学してきました。その作業の様子を順を追って見てみましょう。

まず,ざんざんという機械の音が私たちを迎えてくれました。条払機(じょうばらいき)の音です。桑の葉に付いた5齢の蚕をふるい落とします。写真を見ると分かりますが,ふるい落とされた蚕が下のブルーシートに溜まります。

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ふるい落とされた蚕に網をかけます。あみを懸けると網の穴から元気な蚕が頭を出して網の上に這い上ってきます。この元気な蚕を桶に集めて繭をつくるための小さな部屋に区切られた回転蔟(かいてんまぶし)と言われるものに移します。


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元気の良いかいこが網の中から頭を出してきました

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網から這い出た蚕を桶に入れて回転蔟(かいてんまぶし)の部屋に運びます

桶から雨樋のような容器に蚕を移し,回転蔟(かいてんまぶし)の上に降りかけるようにします。すると蚕は回転蔟(かいてんまぶし)の木枠や小さな区切りの部屋にひっかかり,お気に入りの個室を見つけて移動し,そこで糸を吐き出し始めます。次の写真を見ると分かります。

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百匹ほどの蚕が入った回転蔟(かいてんまぶし)を針金で吊り下げます。いろいろな重心の変化で自然と回転します。

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何十年と夫婦で養蚕を続けて来ました

あうんの呼吸です。

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回転蔟(かいてんまぶし)の作業所 暖房しています。

こうして3~4日すると蚕は糸を吐いてきれいな繭を完成させます。蚕の体内から本当に細い糸が限りなく紡ぎ出される不思議に改めて感銘を受けます。本当にすごい。蚕の繭は一繭約1.5~2グラムで,糸を繰って伸ばすと1800mにもなるそうです。一繭の80%が蛹部分で,後の2割が生糸になります。特に季節毎に春蚕,夏蚕,秋蚕,冬蚕とあるそうですが,この春蚕が最も質の良い出来柄だと言われています。以上が「上蔟(じょうぞく)」と言われる蚕が繭をつくるための作業です。

一年の流れで言いますと
1 孵化-蚕の卵を孵化させること
2 掃き立て-ふかした蚕(蟻蚕)に桑の葉を与えること
幼虫期間
3 給桑-桑の葉を与えること,一日2~3回
4 アドタテ-蚕糞蚕滓(糞尿)を取り除き,きれいにしておくこと
そして今回の
5 上蔟(じょうぞく)-最終齢幼虫が繭をつくりやすくする
6 ヤドイヌキ-一個ずつ繭を取り出す作業
7 毛羽取り(繭研き)-繭の表面をきれいに仕上げる
そしていよいよ
8 出荷となります。

この出荷は生繭のまま出荷します。
幼虫の3齢辺りで配付されますから,約1か月間ながら毎日の作業は気の抜けない大変な苦労があります。長い伝統に培われてきた養蚕の無駄がない,効率的な作業手順や道具にいちいち感銘をうけてしまいました。もう何万という繭が完成されている頃でしょう。


この記事は続きます。


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