2022/12/03
オシラ遊び

朝のガンの飛び立ち 12月1日撮影 蕪栗沼
いつも難しく書いているので,今度は読みやすく「オシラ遊び」についてを物語仕立てにしてみました。分かりやすくするために古い写真も入れてみました。写真は「いわてオシラサマ探訪」(岩手県立博物館調査研究報告書第23冊 2008)からコピーしました
登場人物は 八才の女の子「若」
親戚の女達
オカミサン

山田町 昭和54年旧正月十六日 佐々木宅 オシラ遊びの様子がよく分かりますね 二体のオシラサマをおんぶして,遊ばせています
オシラ遊び
「お母さん。わたし,オシラサマ大好き」
オシラサマを背負ってにこにこと座敷を一回りしてきた若は顔を紅潮させ,息をはずませながら母親に言った。
「よかったわねえ」若の母もにこにことして,八才になった娘,若のおんぶひもを解いて,背中からオシラサマを下ろし,幼い胸に抱かせてあげた。
「きれいなオセンダク」
新しいオセンダクは,昨年本家から佐々木家に嫁に行った千代が持って来た物だった。その切が余程気に入ったのかオシラサマの表情が去年よりずっと明るく,嬉しそうに見えることは,集まった女達の皆が口々に揃えた。若もそう思った。私もオシラサマのように褒められたい,そしていつか綺麗な着物を着て千代さんのようにお嫁に出たい。
今日は正月十六日。オシラ遊びの日である。昨夜降った雪が午後の日の光を受けて眩ゆく座敷の障子を一際白くしていた。オカミサンのふでは,八才になる若がオシラサマを背負って座敷を所狭しとくるりと回る度に湧き上がる女達の歓声に合わせて,若に拍手を贈った。三才の時に失明して,十年以上も修行してオカミサンになったふでは目は見えないが,若を透視して眩しそうな目をして言った。
「若は身体からいい力が出ているねえ。明るく,透き通っている強い光だ」
オシラサマは一通り次々と女達の手元を去ると,オカミサンのふでの所に戻ってきた。ふでは,新しい青い正絹を纏っている男のオシラサマを右手に持ち,左手には鮮やかな紅い正絹に花が大きく染め出されていた女のオシラサマを持って双方の顔を覗き込むようにして,ひと息するとオシラ祭文を唱え始めた。どこか切ないが朗々とした声が正月十六日の早傾きかけている日の光を通して,座の雰囲気を厳粛にさせた。

山田町 昭和54年旧正月十六日 佐々木宅 オシラ遊びの様子がよく分かりますね 二体のオシラサマをだっこしたりしてあやして,遊ばせています
この話は続きます

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