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伊豆沼夕景『ピアノソナタ 第32番』

船の上の夕暮れ船の上の夕暮れ
花びら落つ花びら落つ
ハス終わり近きハス

今日の画像は,夕暮れの独特の青とコントラストが消えていくような輪郭のあやうさを,わざと少し違和感が出るようにレタッチしました。

夕暮れの音
ベートーベン「ピアノソナタ 第32番」ルドルフ・ゼルキン
  
ベートーベンの晩年のピアノソナタは沈黙の色を語るようだ。かたりともしない音の消えた夕暮れの中に立つベートーベンがその静けさのリズムからかろうじて旋律を拾い出しているあやうさがある。探すべきものが見つからないという焦燥感よりも,耳の聞こえなくなった彼の体の中に生まれてくる旋律が波紋を描くように夕暮れの凪の海に広がる。
消えるべき音の悲しみを知ったのかもしれない。

夕暮れ
頭のなかに流れ続けていた
   音楽は止み
呪縛から解き放たれる
過去と今,今と未来をつなぐ引力が弱くなるとき
   ときの編み目からにじみ出した夕暮れの色が包み込む
そして
わたしの中になぎの海が広がる

シリウスが輝き始める
東の空が音もなく落ちていく
  ラピスラズリ
バイオレット
  ジェンティアン・ブルー
    パープル
     ピアニー・パープル
        ヘリオトープ
           アメジスト
             くわの実色
                インディゴ・ブルー
                  ミッドナイト・ブルー


水族館の照明が落とされ
青い常備灯の中に映し出された水槽の回廊に
耳が聞こえなくなったベートーベンが
   立っている

沈黙の底から
フーガがゆっくりと波紋を立てるように
彼の周りへ広がっていく
彼の差し出された手を
誰かの白い手が受け止める

一歩
誘われるように
夕暮れの音が消える前に
   彼を導く

まわりの景色がこわれそうで動けない
音で世界を創造したと
音に魂を吹き込んだと
そう思っていたのに

世界を説明するのがこわい
音もなく空が落ちてきそうだから
差し出された白い手が
   何も言わなくてもいいと
   かすかに
ゆれた

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番、31番、32番ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番、31番、32番
(2008/01/23)
ゼルキン(ルドルフ)

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