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マヨイガ

マヨイガマヨイガ

「こんにちは」
もう何回呼んだか。
土間に体を乗り入れて見ると,かまどには火が勢いよく燃えている。
さっき見た座敷にはお膳が並べられて,ふたが取られた赤い椀からは吸い物が湯気を立てていた。
どうしたって人がすぐ何処からか出てきそうなものだ。
何かが動いたと思ったら,奥の座敷の書斎窓の彼方に竹藪の竹が風で動いているばかりだ。
いろりにはくべたばかりの木に火が燃え移ろうとしている。
「こんにちは」
・・・・・。
屋敷の中は静まりかえっていた。

「こんなに探して見つからねえんだ。『マヨイガ』だよ。」
山から今下りてきた衆がそう言った。
たしかにあんな山奥に家なんかないはずだ。
今まで何遍もあの山には入っている。

「しかし,見たんだよ。そりゃ,立派な屋敷だった。」
この沢をつめた場所だった。あの不思議な屋敷があったのは・・・。

山を調べた衆は提灯に火をつけて銘々山道を下っていった。
それを追いかけるかのように,赤い椀のふたが沢の水に流されていった。

遠野物語』の「マヨイガ」から

屋敷神屋敷神様

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林
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