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「名取老女」の見た仏

わたしは宮城県に住んでいます。
今日は,その宮城に住んでいた遠い昔の老女の話です。
ネイチャーフォトからは離れた話になりますが,ひまつぶしにでもと思ってお付き合い下さい。
遠い平安時代まで話は遡ります。そして主人公は,一人の年老いた女の人。その女の人は「名取老女(なとりろうじょ)」と呼ばれていました。
名取というのは宮城県仙台市の南にある名取市のことです。つまり,名取に住んでいたおばあさんということになります。
そんな名取のおばあさんが,なぜそんなに有名になったのか,と思います。そこでこの一枚の絵が関係してくるのです。

熊野信仰 002s熊野権現影向図 京都 檀王法林寺蔵,元徳元年(1329)

この仏画に描かれているのは,阿弥陀如来です。名取老女が見たという阿弥陀如来なのです。

話は,その経緯から始まります。

遠い昔。
陸奥の国,奥州名取郡に名取老女というお年寄りの女の人が住んでおりました。
名取老女は,大変信心深く,毎年,遠い熊野まで詣でることを欠かしませんでした。
その年も連れと共に熊野の那智の宮までやって来ました。すると山あいの方から紫色の雲が湧き上がり,その雲の上に忽然と阿弥陀如来が現れたのです。

この話は,またたく間に有名になり,伝説となって行きました。
なぜ一界のお年寄りの体験が伝説にまでなれたのでしょうか。

この名取老女の作った歌が,「熊野御歌」として,平安末期(1125)成立の藤原清輔の歌学書「袋草子」に出ているからです。
道遠し年もやうやうおひにけり思いおこせよ我も忘れし
是陸奥ノ国ヨリ毎年参詣シケル女ノ年老イ後夢ニ見歌也

名取老女は,歌詠みとしても有名だったのかもしれません。それとも阿弥陀如来に親しくお会いした人ということでセンセーションを起こして,時の人となり,その時の歌が取りあげられたのかもしれません。

更にこの出来事は,大きくなり,動かぬ伝説として,世阿弥の謡「護法」の中に「名取老女」として出て来ることになります。

現代で言えば,名取老女という人は大ヒロインでしょう。
このようにして一枚の仏画が描かれることになったのです。

この話は宮城県博物館「熊野信仰と東北」展(2006)の資料を読んでいて,みつけました。調査もしていませんので,間違いがあるかもしれません。ひとつのお話だということを断っておきます。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。

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