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吉増剛造 残像と化すことば

朝1.5 168s葦原の道(1月)

 歩行ガ,ユメノ,ナカノ,繁ル丘ニ,登ッテ,イッタ。
 姿ガ,幽カニ浮カンデ,来テ,イタ。
 薄イ,血ノ色,ニ,包マレ,テイタ。
 
 奥デ,タズネル聲ガシタ。

 少シ,姿ガ,崩レタカ。
                        吉増剛造『好摩,好摩』

 すべての景色は残像のように消えつつある。その痕跡だけが見える。
 瞬間,瞬間にその土地の古代のむき出しになった地層が湧き上がって来ては思考の連続を阻む。
 気配と痕跡とかまいたちのような閃光が現在と古代という時間軸を絶えず壊しているのだ。むきだしの土地の歴史が一瞬のうちに迸る。
 吉増剛造のことばは,時間が崩壊したむき出しの場に現れる霊を写し続けている。 
夕方1.3 039s夕暮れの金星に散る

 木魂,残響,気配,残像。
 言葉は明確さだけを追究しているのではないはず。
 消えかかる闇やしじま,人は曖昧な夢でも泣くことさえできる。
 歩くうちに,ただ彷徨う思考は言葉になりかけては沈んで行く。かすかなる波紋が立つ。
 強い力だけがこの世を変えるのではない。かすかなる波紋の立てる振動がやがてシンクロして増幅する。そしてこの世を覆い包むことがある。その見えないその変わり目を語る言葉がほしい。
 その言葉は,かすかに立ちのぼる。木魂,残響,気配,残像として書かれるべきものである。
kogaisan2 056sはくちょう座付近

 あのデビュー当時の切っ先鋭い言葉や疾走は何処に行ったのだろうか。
 旅という空間の横移動だけをしていたはずが,見えていない過去の残像(景色)まで感じられるようになってしまった。

「精霊日記の右隅あたり,東南の角部屋あたりから
 小川がながれはじめ・・・」
                       吉増剛造「草書で書かれた,川」から『アドレナリン』
 部屋に流れ出す小川とは,まさしく部屋のあった場所の古代の姿である。ここという場所だけで繋がれた重なり合う映像。
「小川は囁く。
 小川は囁く。

 人影が静かに歩く。」

 人影なのです。やはり木魂,残響,気配,残像なのです。
 そしてこの人影の主は,まれびとだったりするのです。
 小川の水の流れに従い,やがて山から下りてくるもの。

kogaisan2 076sかすむ室根山(8月)
 裂け目に永遠に木魂し続ける声。

 「何処からか,仏様遊ぼ,と声が聞こえて,来るのだ。」
                        吉増剛造「左様なら宇曽利湖津軽よ」から
 何処からかの声によって導かれ川を渡りあの世へ行き,また何処からかの声によって呼び戻され,東南の角部屋に戻る。映像という景色は脈絡もなくシャッフルされて次から次へと現れる。それらの景色をかろうじて繋ぎ合わせるかのように何処からかの声が景色の底から浮かび上がってくる。

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